災害と国家権力と・・・

今回の原発事故を眺めていると、判断はやはり、現場の専門家チームに任せて、そこに必要なものを手配するとか、最悪の事態に陥ったときの操作を承認すると言うことが、上層部のやることというような感じです。

残念ながら、政府はやってはいけないことをずいぶんと積み重ねたような気がします。

たぶん、正しい対応は・・・地震直後、原発の停止が確認、津波によって被害・・・電源喪失・・・ここから、政府が動き出すことになります。

原子炉によって引き起こされる被害は最悪なものは、想定済みですから、一刻も早く、機能を回復させることが国家として重要だと言う認識があれば・・・復旧のための資材確保・・・自衛隊を動かしても・・・が、政府としてやるべきことで、作業指示を出すことではないです。まず、この点で、初動の遅れと、あたかも、分隊長のサンダース軍曹が、部下に指示を出して攻撃を命ずるような、きわめて戦術的なことに口を出した首相がよろしくなかったのではないかと思われます。

政府のすべきことは大局的なもので、個人や単なる企業では行えないことを、権力によって行うことでしょう。何のために国民から権力が委託されているのか良くわかっていないような・・・国家権力と言うのは、国民が自分の権利の一部を放棄する形で移譲することを承認することであると思われます。

何かの、緊急時に私権を制限する権利、これが権力です。だから、権力の乱用は認められないと言うことになります。

さて、政府がやるべきことは・・・
第一に、復旧資材を手配させるために、被害報告を出させること・・・これが、電力会社に対する指示ですね。現在、どうしても必要な物資で優先順位の高い順に作られたリスト、リストの内容は物品の名称・規格・メーカー、メーカーの納入担当者及び連絡先・・・代替品があれば、相当品ですね。

物資を援助する際には、援助ルートが問題になります。国家は自衛隊を動員できますから、物資輸送の手段は持っています。ですから、リストが出てくるまでの間に、交通路の確保の指示を出せばよいことになります。警察と道路行政にかかわる人ですね。この際、入札資格のある業者に声をかけて直ちに主要道路の整備までを指示すればよいでしょう。そして、通行可能なルートの明確化を行えばOK

並行して、自衛隊に頑固そうで、きちんと話ができる指揮官と、兵站に詳しい部下と、どんなものでも運び出せる体力を持った自衛官をトラック3台分ほど用意させ、例の水撒きに使ったようなヘリを何機か待機させ即応能力を上げておけばよいでしょう。

さて、リストが届いたら、そうだな・・・モーターが良いかな?どうしてもモーターがほしい!となったら、政府はメーカーの納入担当者へ連絡・・・モーターの在庫を調べさせます。在庫がなければ・・・近頃、納入した先のリストと、接収するのに都合の良いものを納入担当者に探すように指示、あと、納入・設置に必要な技術者を待機させることを指示すればよいでしょう。そして、ここからが国家権力、私権を制限する権利の登場です。

先ほどの頑固そうで話ができる指揮官と、政府のものをつけてメーカーへ、納入担当者を拉致して、納入先へ向かいます。納入先が遠ければ、トラックの代わりにヘリですね。そして、先方に有無を言わさず、接収して、復旧のために輸送すればおしまいでしょう。

これが、危機管理というものだと思うわけです。法的には、災害対策基本法がその根底となるでしょう。ちょっと、その災害対策基本法で何ができるか?また、何を目的としているかを考えてみることにしましょう。

第1条 この法律は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。

まず、この法律の目的が示されていて、この法律言い訳に使うときに、逸脱してはならないことが書かれています。先ほどの私権を制限する・・・自由権であるとか所有権を侵害するに当たって、公共の福祉に反していないかと言うことですね。ちょっと、美術品がほしくて、国家権力で、自衛隊を派遣し、個人の所有物を奪取するようなことはしてはいけないと言うことです。

第3条 国は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することにかんがみ、組織及び機能のすべてをあげて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する。

ここでは、国に様々な措置を取ることができることと、措置を取らなければいけないことが明確化されています。さて、ここで委譲される権利がどのようなものであるかが、その後に規定されています。

第78条 災害が発生した場合において、第50条第1項第4号から第9号までに掲げる事項について応急措置を実施するため特に必要があると認めるときは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、防災業務計画の定めるところにより、当該応急措置の実施に必要な物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対し、その取り扱う物資の保管を命じ、又は当該応急措置の実施に必要な物資を収用することができる。

こんな具合に、物資の収用ができますからね。災害救助法でも同様なことができると定められています。

第二十四条 都道府県知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるときは、医療、土木建築工事又は輸送関係者を、第三十一条の規定に基く厚生労働大臣の指示を実施するため、必要があると認めるときは、医療又は土木建築工事関係者を、救助に関する業務に従事させることができる。

人だって、必要であれば、無理やり動員することができるのですから・・・

こんな具合に、法律と言うのは、様々な手段をとることを、行政機関に要求しているのですが・・・実際には危機管理というのは単に絵空事のようにしか、考えていないと言うことのようです。

結局のところ、首相がやったのは国家権力を行使することではなく、単に、色々とかき回してしまっただけということになるのかもしれません。

さて、行政がどんな権力を行使したのか、色々と調べてみるのも興味深いと思うわけです。
(2011.04.06)

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