国の形・・・? 国民の憲法(1)

 憲法遊びを始めてしまいました・・・こうなると、せっかくですから産経新聞社のまとめたやつを精読してやらねばならないですかね?

 
第一条(国柄) 日本国は、天皇を国の永続性および国民統合の象徴とする立憲君主国である。
 
第二条(国の元首) 天皇は、日本国の元首であり、国を代表する。

 あれ?前文では立憲国家だったのに、ここでは立憲君主国家となってる?やはり、多くの目にふれる全文とは違った表現になってるのか?立憲君主国と言えば英国で・・・英国の国王の地位は・・・ウェストミンスター憲章(1931年)で、「イギリス連邦構成国の自由な連合の象徴である」だったかな・・・しかし、1条と2条の順が変な気がする・・・国民主権というのはどこへ行ったのやら?天皇の地位は何によって・・・?現行憲法では「第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」で明瞭ですが・・・

 それなら・・・
 第一条  日本国は国民統合の象徴である天皇を元首とする立憲君主国である。天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
 というぐらいでよさそうな気がします。国民主権の立憲君主体制・・・逆に言えば、国民主権を放棄するという文言として書かれたのかね?王権神授説でも唱えるか?それとも後に出てくるのか?

 
第三条(皇位の継承) 皇位は、皇室典範の定めるところにより、皇統に属する男系の子孫がこれを継承する。

 柔軟性に欠ける・・・男系が絶えたときは日本国は滅びるのか?憲法改正の発議が、やむを得ずして「男系子孫」を改定するために行われる可能性を秘めるから、現行憲法の「第二条  皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。」と皇室典範に投げてしまえばよさそうな気がするが・・・男系に拘りたいのかね?女帝も良いと思うが・・・

 
第四条(天皇の権能、内閣の補佐および責任) 天皇は、この憲法の定める国事行為および公的行為を行う。
   2 天皇のすべての国事行為および公的行為は、内閣がこれを補佐し、その責任を負う。


 現行憲法で対応する条文は次のようなものですね。検討を要するのは・・・憲法の定める国事行為および公的行為の部分ですね。これは後にするとして・・・天皇の国事行為が、現行憲法では全て内閣の手中にあるとされるのを独立させ、内閣は補佐と責任を負うことになる・・・どうも、権利と義務の関係が曖昧になっている・・・・
 第三条  天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
 第四条  天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
    2  天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

 現行憲法の場合、国事行為は内閣のコントロール下にあり、内閣の承認で行われた国事行為は、内閣が責任を負う形になってるが・・・この試案の方は、片務的な感じ・・・これってまずいのでは?日本的な曖昧な文言・・・天皇がやっちまった行為は内閣が辞職して責任を取るってことだね。

 
第五条(摂政) 皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は天皇の名で国事行為を行う。

 
摂政は皇室典範の規定によるわけか。皇室典範を改定しないと、天皇=国事行為を行うものとするなら、第三条で国事行為を行うのは男系というのが崩れるのでは?摂政も男子とする方がきれいかな?そして、現行憲法の対応条文は「第五条  皇室典範 の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。」となっています。ここでは、摂政の行う国事行為に制限をかけている・・・

 摂政が行う行為について、制限は掛けられていない・・・そして、内閣も責任を取る必要が無いのか?摂関政や院政を予定しているのか?権利義務関係のはっきりしない文言ってどうも穴が多くなる傾向があるのでは?あとは・・・現行憲法の第四条2項の委任の規定が無いから・・・国事行為は全て天皇が行わなければならなくなる・・・これは、不可能では?そうなると、委託者は摂政で、摂政は常設になるのか?

 第六条(三権の長の任命) 天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
  2 天皇は、衆議院の指名に基づいて、衆議院議長を任命する。
  3 天皇は、参議院の指名に基づいて、参議院議長を任命する。
  4 天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所長官を任命する。

 これは・・・現行憲法の条文では
 第六条  天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
    2  天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
 これに対応するが・・・衆参両院議長の任命を増やしている・・・議長の任命は・・・現行憲法では「第五十八条  両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。」議長は、議員の代表者・・・?ここで天皇に任命権を与えることはどういうことになる?わざと、国事行為から外している理由は?現行憲法「第三条  天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」からでしょうね。各々の議会は議会で責任を持つから・・・内閣に責任を負わせないため。内閣とは分離させるためでしょうね。なぜ、内閣に責任を負わせる?意図が良くわからない・・・

 
第七条(天皇の国事行為および公的行為) 天皇は、左の国事行為を行う。
  一 憲法改正、法律、政令および条約を公布する。
  二 国会を召集し、衆議院を解散する。
  三 国会議員の選挙を施行する。
  四 国務大臣および法律で定めるその他の公務員を任免する。
  五 全権委任状ならびに大使および公使の信任状を発する。
  六 外国の大使および公使の信任状を受理する。
  七 栄典を授与する。
  八 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を行う。
  九 儀式を主宰する。
  十 元号を制定する。
  2 天皇は、左の公的行為を行う。
  一 伝統に基づく皇室祭祀を行う。
  二 国家的儀式または行事に出席し、国内を巡幸する。
  三 前二号のほか、日本国民統合の象徴としてふさわしい行為を行う。


 現行憲法では次のようなのが対応します。
 第七条  天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
  一  憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
  二  国会を召集すること。
  三  衆議院を解散すること。
  四  国会議員の総選挙の施行を公示すること。
  五  国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
  六  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
  七  栄典を授与すること。
  八  批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
  九  外国の大使及び公使を接受すること。
  十  儀式を行ふこと。

 違いは、現行憲法が内閣の行政行為の象徴として天皇の手を煩わせる形を取っている・・・試案は天皇の名で行わせている・・・極端な書き方をすると、天皇は内閣の命で、左の国事行為を行う。と書いちゃえばよいのでは?まるで、天皇を利用するための条文のように見えて・・・ちょっと腹が立つ!現行憲法の「天皇は、内閣の助言と承認により、
国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」の方が立派な文言に見えるが・・・「国民のために」じゃなくて、ここを、「内閣のために」に書きなおしたかったのでは?案外、天皇の名を使った、超然内閣を意識しているのかも?

 
第八条(皇室典範の改正) 皇室典範の改正は、事前に皇室会議の議を経ることを必要とする。

 唐突だな?憲法で定めるべき事柄なのか?皇室典範の改正の発議は、皇室会議によるわけだから・・・皇室典範の「第二十九条  内閣総理大臣たる議員は、皇室会議の議長となる。」つまり、内閣のコントロール下に皇室を置きたいって?

 
第九条(皇室の財産) 皇室の財産は、世襲財産を除き、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

 皇室の財産は予算に計上?皇室の費用は予算に計上されるが・・・この試案は意味が不明・・・対応条文は・・・「第八十八条  すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。」

 こんな具合かな・・・憲法学者じゃないからよくわからん・・・

(2013.05.04)

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