北朝鮮のロケットは?

北朝鮮のロケットが失敗しましたが、果たしてこのことからどのような事柄が学べるか?ということを考えてみました。北朝鮮側で得られたのは、1段目のロケットはそこそこまともに働き、高度150km程度まではいけるぞ!ってことなんでしょう。

何しろ、前回は日本の上空を抜けるコースを取っていますから、打ち上げについてそれなりの自信があったと思われます。今回のは、洋上ルートを通っていますし、軌道速度を出すためのコースとしては不経済なものですから、案外1段目の燃焼実験だったのでは?なんて考えてしまいます。

とにかく、宇宙空間というと、いくつか定義が分かれますが、国際航空連盟 の規定によると高度 100 km 以上のことを、アメリカ軍なら高度50ノーチカルマイル=92.6 km 以上の高空ですからね。

つまり、北朝鮮のロケットは宇宙の入り口に、かなりの重量物を送り込むことに成功していることになります。

アメリカの宇宙開発の歴史もちょっと回顧して見るのも良いかもしれません。第二次大戦でミサイル技術を確立したドイツの技術の直系の子孫が、アメリカとソ連ですね。フォン・ブラウンのチームです。ドイツのミサイル開発は宇宙に行きたい!という団体が発祥でしたが、ナチドイツの肩入れで軍事技術として大成してしまったのがV2型ロケット・・・ロケットというのは運搬具に過ぎませんから、それが平和目的か戦争目的なのか?それは利用者の問題なのですがね。

さて、アメリカはV2ミサイルの技術者・資材をレッドストーン陸軍兵器廠に集めます。そして、フォン・ブラウンがヴァンガード、レッドストーン、ジュピター、ジュピター-C、パーシングそしてサターンという一連のロケットの開発の中心となります。

レッドストーンロケットなどはよく発射実験で爆発したりしていましたっけ・・・高温高圧のガスを噴出するわけですからなかなか大変な技術で、特に燃焼室に燃料を送り込むターボポンプや、燃料の流量を制御する装置の開発が大変だったようです。

そういえば、日本のロケットの心臓部はどうなっているのやら?燃料の流量制御を行う装置は国産化されたのかな?ふと、わが国のロケットもチェックが必要かと思われます。

ヴァンガードロケットはよく爆発していたような感じです。V2ロケットのエンジンを大型化するという、かなり困難な開発のようでした。ソ連のR-7ロケットが、基本的にはV2ロケットのエンジンを束にして推力を増す方法を取って開発ではリードします。結果として衛星の打ち上げも有人飛行も・・・アメリカはソ連に先を越されることになります。アメリカはソ連のスプートニク1号に遅れること、およそ4ヶ月弱でレッドストーンロケットの系統にあたるジュノー1ロケット(ジュピターCロケット)によってエクスプローラー1号が打ち上げられます。その後、ヴァンガードロケットでヴァンガード1号が打ち上げられます。この衛星は発信器とバッテリーと太陽電池を搭載した人工衛星で16pほどの球体で1.5kg、太陽電池を搭載していたので1958年3月から電波を地球に送り、1964年まで信号を送っていましたが、この衛星は未だに地球を周回する軌道にあります。まあ、数千年は落ちて来そうもないようです。

そして有人宇宙飛行を目指したマーキュリー計画でレッドストーンロケットを使ってさまざまな実験が行われました。1号では10cm上昇して爆破、1A号で無人飛行に成功、2号でチンパンジーを軌道に送り込み、BD号で有人飛行に向けたブースターの開発実験、3号でフリーダム7という有人機が打ち上げられ、アラン・シェパードが宇宙空間をかすめる弾道飛行に成功します。このときの飛行は時間で15分28秒、最高高度187.42km、飛距離は487.26kmの弾道飛行を行い海上に降ります。そして、4号でリバティーベル 7という有人機が打ち上げられガス・グリソムが搭乗しました。この飛行では、最高高度190.39km、飛行距離486.15kmの弾道飛行でした。

ロケット開発の歴史というのは・・・爆発の歴史のようなものです。高価な運搬具で、爆発・廃棄のサイクルのかなで発達したものです。

さて、北朝鮮のロケットが失敗したことで、日本・アメリカ・韓国の防空システムと3カ国の運用の連携についてわかった部分が多いのではないかと思われます。アメリカの軍事衛星は優秀で、その通信網は優秀であることは間違いありません。早期警戒衛星はきちんと役目を果たします。そして、直ちに同盟国に情報を送信することが可能であることを証明しました。まあ、地球の裏側でのスカッドミサイルの発射の探知と迎撃で修業していますからね。その上、あの国は絶えず飽きずに練磨しますから。

細かい情報を集めて精査しないとわかりませんが、一応早期警戒衛星からの情報は自衛隊の末端までは伝わって臨戦態勢に入ったようですが、それ以降の情報が交錯しているようです。

今、気になっていることは日本のレーダー網はなぜ探知していないのか?こいつなんです。高度150kmに達したロケットなら破片であっても下甑島からレーダーが探知してもよさそうなものですが・・・適当に、灯台がどのくらいのところから見えるかの光達距離を計算してみると、間違いなくレーダーで探知できなければならないのですが・・・

あとは、現場指揮官の権限ですね。ロケットの発射と思われる、高温の燃焼を衛星が捉えた。これだけが伝わってきていて、そのほかの情報が無い・・・PAC-3だと、迎撃範囲は半径20km程度ですから、レーダー哨戒圏は半径200km程度でしょう。そこを秒速8kmとは言わないまでも秒速4km程度で飛行する物体なら50秒で探知してから飛来して来てしまいます。

まあ、早期警戒衛星からの情報から10分程度の間で、どうすればよいのか?その対応を上層部がした上で、末端まで連絡が行く必要があります。

本気の核による攻撃だったら?
7時40分、早期警戒衛星からのミサイル発射と思しき高温の燃焼を捉えた。
7時41分、イージス艦や高射部隊に臨戦態勢の発動
7時42分、閣僚の招集
7時43分、ミサイルの探知・軌道の計算により首都東京に向かうことが判明
7時43分、迎撃の許可をイージス艦より求められる。応答は、ちょっと待て閣議が召集されつつある。
7時44分、イージス艦・J/FPS-5下甑島・佐渡分屯地より軌道の確認及び、大気圏外に出たことの報告。
7時45分、イージス艦より、ミサイルの大気圏再突入に際しての迎撃許可を求める。文民による決定が無い、待て!
7時46分、ミサイルは大気圏に再突入、SM-3による迎撃は不能、との知らせがイージス艦より入る。
7時47分、古河駐屯地の第2高射特科群・入間駐屯地の第1高射特科群がミサイルを識別、迎撃体勢にに入るものの、射程外で迎撃不能
7時48分、着弾
東京は10メガトン相当の核兵器により壊滅的な破壊に合い、中枢組織は破壊、大阪府庁社内に臨時政府が開かれる。北朝鮮よりの侵攻はなし。報復攻撃も行われなかった。ただ、沈黙が支配している。安保理事会が招集され、北朝鮮への・・・

ちょっと、時間が長すぎるような気がします。1分刻みで書いてみたのが良くなかったようです。実際には6分程度の事象なのでしょう。そういえば、世界終末時計というのがありましたっけ。あれは、今、何分を示しているのでしょうか?Doomsday Clock Overview Bulletin of the Atomic Scientists これですね。世界終末時計は5分前です。

さて、報道を精査して、もっと何かわかるか確認してみましょう。
(2012.04.14)

inserted by FC2 system