原子炉の事故を入試に使えないかと・・・

 公開された情報で、どこまで原子炉の構造がわかるのか?ちょっと気になって、ずいぶんと調べました。まあ、暇なんですね。それと、原子炉といっても、基本は圧力釜とあまり変わりませんから・・・私の本業の中学入試でどんな問題が作成可能なのか?そんなことも気になっているんです。

さて、基本は圧力釜・・・まあ、ガス台の上の圧力釜とちょっと違うのは、ガスコンロのガスは空気中の酸素を使って燃焼して熱を発生しますが、原子炉の方の核の火は、酸素は必要としません。そして、核の火を燃やし続けるには、中性子をウランの原子核にうまくぶち当てるためにウランが崩壊したときに出る高速の中性子を減速させて、別のウランにうまい具合にぶち当てなければなりません。この減速材として使われるのが水なんです。そして、ついでにこの水で核の火から発生する熱を取り除いて、核燃料が高温になるのを防いでいます。

さて、稼働中の原子力発電所の圧力釜の中の圧力はどうなっているのか?どうやら、284℃程度で、圧力は6.8メガパスカルとのこと・・・意外と低いんです。6.8メガパスカルって・・・たぶん67気圧ぐらいだな。石炭火力発電所では600℃、25メガパスカル・・・247気圧という圧力の水蒸気を使っています。

高温高圧の蒸気のほうが大きなエネルギーを持つんですが、原子炉では石炭火力より低い圧力で動いています。この理由というのが核燃料を被うジルコニウムの性質によるものなんです。

核燃料の中心はウラン235でこいつは小さなペレット状のものに整形されています。小指の先ぐらいですかね?円筒形のものです。こいつをジルコニウム合金製の筒の中に収めます。なぜ、ウランのペレットを筒に入れるか?理由は、核分裂の際にできる核分裂生成物ってやつのためなんです。初期の原子炉はこのようなジルコニウム合金製の筒の中に入れずに核反応を起こさせていました。

しかし、核分裂の際にウラン235はいろいろな新しい物質を作り出します。主なものとしてはセシウム133 ヨウ素135 ジルコニウム93 セシウム137 テクネチウム99 ストロンチウム90 ヨウ素131 プロメチウム147 サマリウム149 ヨウ素129 などです。このうち、気体になって出てくるもの・・・近頃のニュースでよく耳にする放射性ヨウ素であるとかそういったものを封じ込めるために必要です。この金属はかなり高い温度まで安定していますが、それを超えるとかなり色々な物質と反応して様々な化合物を作り出します。このジルコニウムの温度に対する性質で300℃程度の温度での原子炉の運用となっているのです。

さて、ジルコニウムが高温でどのような反応性を示すか?こいつが問題です。水は水素と酸素から成り立っています。ジルコニウムは金属なんで、酸化物を作ります。どこからか酸素を調達してきて・・・、高温の水蒸気はこの酸素の供給源になるんです。

そう、ファラデーの「ろうそくの科学」ってやつに、水蒸気を強く熱した鉄くずの中に通して水素を得る方法が出ていたと思います。

ちょうど、これと同じことが高温になった原子炉の燃料棒の周りで起こったために、水素が大量に発生し、水素爆発を起こしたなんって報道されていたと思います。原子炉建屋の壁などを吹き飛ばした爆発です。

ということは、このときには、すでに圧力容器内に発生した水素ガスが出たということなんでしょう。・・・ん?

密閉された容器の中から水素が漏れ出す?水素は水蒸気の大気放出に関係があるようです。こうなると、面倒でも福島第一原子力発電所の動きをチェックしてみる必要があります。だって、水素爆発が起こるきっかけは何か?こいつが知りたくなりますからね。

さて、ジルコニウム合金製のパイプと水蒸気ってどこで出会ったのでしょうか?圧力釜で考えてみましょう。

圧力釜は水の沸点を圧力によって100℃より高い温度にして、通常の調理に比べて短い時間で行うことを目的としています。高圧下では沸騰すなわち液体の中からの気体の発生は起きません。ということは・・・

原子炉の圧力容器の内部は高圧に保たれていれば、そして、核反応をとめた後でも発生する熱をうまく下げることができれば、原子炉内でジルコニウム合金製のパイプと水蒸気が出会うことはありません。だって、閉鎖された中で水が状態を変えて循環しているわけですからね。

原子力発電所や、火力発電所が臨海部に設置されている理由は、燃料輸送を海路でということより、冷却水の問題があるからです。ボイラーで作られた蒸気はタービンを回します。この蒸気は大気に捨てられることはありません。高品質な純水が水蒸気を作るのに使われているからです。もし、ボイラーで蒸発させる水に不純物がたくさん入っていたら、ボイラーの中にそれが濃縮されパイプなどが詰まってしまうからです。純水を製造するにはたくさんのイオンを吸収する樹脂が必要で、この樹脂が高いんです。よって、タービンを回すのに使われた水蒸気は、復水器で冷やされて再び水に戻されてボイラーとか圧力容器内へ戻されるのです。

ですから、この閉鎖された系の外に水が出ない限りは炉は安定した状態であるはずなんです。

さて、水素爆発が起こる前の福島第一原子力発電所の様子はどうだったのでしょうか?
TEPCO 福島第一原子力発電所 プレスリリース-ホームページ掲載情報

こいつを見ればわかります。

地震直後の報告では、「本日、当社・福島第一原子力発電所1号機(沸騰水型、定格出力46万キロワット、2号機および3号機(沸騰水型、定格出力78万4千キロワット)は定格出力一定運転中のところ、午後2時46分頃に宮城県沖地震により、タービンおよび原子炉が自動停止しました。上記3プラントにおいて、2系統ある外部電源のうちの1系統が故障停止し、外部電源が確保できない状態となり、非常用ディーゼル発電機が自動起動しました。
  その後、午後3時41分、非常用ディーゼル発電機が故障停止し、これにより1、2および3号機の全ての交流電源が喪失したことから、午後3時42分に原子力災害対策特別措置法第10条第1項の規定に基づく特定事象が発生したと判断し、第1次緊急時態勢を発令するとともに、同項に基づき経済産業大臣、福島県知事、大熊町長および双葉町長ならびに関係行政機関へ通報しました。今後、非常用ディーゼル発電機が停止した原因等を調査し復旧に取り組んでまいります。」というものでした。単に原子炉は止まっている、非常用のディーゼル発電機は動いたけれども、1時間ほどで止まったので、電気がないので困っている。これは報告の義務のあるものだから、報告したよ!ってものです。

つまり、原子炉が止まったことは問題がないが、原子炉を運用するために必要な電力がないことが問題ということのようです。

基本的には、原子炉は発生した蒸気で水を還流させるシステムがあるようですから、原子炉を停止させれば・・・制御棒を入れて新たな中性子を吸収して核反応をいわゆる停止と呼ばれる状態にしてしまえば、自立的に何とかなり、ある程度の時間は放っておいても大丈夫なように設計されているようです。

ちょっと気になるのは・・・
3月12日午後1時の原子炉の様子の発表です。まあ、この前あたりから、実は気にしていた文面があるんです。

1号機(停止中)
・原子炉は停止し、非常用復水器で原子炉蒸気を冷やしておりましたが、現在は停止しています。原子炉格納容器内の圧力が上昇していることから、国の指示により、安全に万全を期すため、原子炉格納容器内の圧力を降下させる操作を継続実施中です。現在、原子炉水位は低くなってきており、注水を順次実施しております。
2号機(停止中)
・原子炉は停止し、原子炉隔離時冷却系で原子炉に注水を行っております。現在、原子炉水位は通常より低いものの安定しております。なお、国の指示により、安全に万全を期すため、原子炉格納容器内の圧力を降下させる操作の準備を行っています。
3号機(停止中)
・原子炉は停止し、高圧注水系で原子炉に注水をしております。なお、国の指示により、安全に万全を期すため、原子炉格納容器内の圧力を降下させる操作の準備を行っています。
・現時点において、原子炉格納容器内での冷却材漏洩はないと考えております。
4号機(定期検査で停止中)
・原子炉は停止しており、安全上の問題がない原子炉水位を確保しております。
・現時点において、原子炉格納容器内での冷却材漏洩はないと考えております。
5号機(定期検査で停止中)
・原子炉は停止しており、安全上の問題がない原子炉水位を確保しております。
・現時点において、原子炉格納容器内での冷却材漏洩はないと考えております。
6号機(定期検査で停止中)
・原子炉は停止しており、安全上の問題がない原子炉水位を確保しております。
・現時点において、原子炉格納容器内での冷却材漏洩はないと考えております。

わざわざ、国の指示によりという言葉が入っていることなんです。これって・・・俺はやりたくなかったんだが、どうしてもやれといわれたから、きちんと記録に残して置くぞ・・・ってやつじゃないかと思うんです。俺は悪くない、みんな国が唆すか、強権を持って命じたんだ!って・・・そんな風に読めるんです。

命じた内容はベントってやつですね。水蒸気を大気放出するというやつです。これって、むちゃくちゃ危険なんでは?なんって、素人の私は思うんです。スリーマイル島の原発事故のときって・・・原子炉に純水を供給するための脱塩装置のイオン交換樹脂が混じった水がなぜか、制御用の高圧空気のラインに流れ込みます。これを検知した計器は、主給水ポンプを停止させます。これによって、タービンへの蒸気は絶たれ、二次冷却水の流れも絶たれ、結果として原子炉圧力容器内の圧力が上がります。ここで、安全装置である加圧逃がし弁が開きます。蒸気機関車などの上にもついている限界圧に達したら、勝手に開くやつですね。その結果、一度に大量の水蒸気が発生して、この蒸気逃がし弁を通って圧力容器内の水が蒸発して逃げていきます。このとき、水が一気に沸騰したために、水の中にはたくさんの水蒸気のあわで満たされ、水位計は意味をなくします。泡と水面の区別がつきませんからね。

そこで、操作員は、水がなくなっていることに気づかず、圧力容器内への給水を停止します。この結果、水蒸気は逃げ出し、いつの間にか炉心、つまり燃料棒はむき出しになり、自らの熱で熔けて・・・すごいことになったのですが、環境への影響は大したことがなかった・・・

ベントってすごく危険な操作では?と思うわけです。高圧下では、水面からの蒸発だけで水蒸気が発生します。これは水蒸気の圧力が水面を強く押すことで蒸発を防いでいるからです。そう・・・単純な喩えでは・・・そうだな・・・

A君がコーラを持って部屋に入ってきました。A君はちょっと、と言って部屋を出るとB君は一生懸命コーラのビンを振ります。当然のことながら、密閉されているボトルの中ですから、コーラの表面から発生した炭酸ガスはコーラの水面に圧力をかけて泡が発生しない状態を保ちます。部屋にもどってきたA君はコーラの栓を開けると・・・・中のコーラが炭酸ガスの泡と一緒に噴出してくるという状態になります。

どうも、国の指示によって、ベントを行い、その結果一度に大量の水蒸気を発生させ、ジルコニウム合金の管と水蒸気が接したことで大量の水素が発生してそれが、ベントとともに大気に放出され、その一部が建屋内にこもり建屋内の酸素と反応して水素爆発したのでは?なんって思えるわけです。

特許広報を眺めると、発明の中に興味深いものがあります。ベントによって大気放出されるものを一度水に通して放出する・・・そういったやつですね。スリーマイル島の原発事故の際にはてきと〜に500トンに上る水を水蒸気として放出して、炉心熔解を引き起こしました。

しかし、このような乱暴な大気放出は近頃は望まれていないものなので、過酷事故時の原子炉格納容器内圧力放出によって大気中に排出されるガス状および粒子状の放射性物質を低減させる方法および装置と言うものが考案されているようです。大掛かりな改修をせずに、実現できそうな装置ですから、案外、福島第一原子力発電所にもあったのかな?なんって気がします。

特許申請書類の文言に「過酷事故時などに格納容器の加圧破損を防止するとともに、既設の気体廃棄物処理系を利用することにより、大掛かりな除去装置を新設することなしに、格納容器内へ放出されるガス状および粒子状の放射性物質の環境への排出量を大幅に抑制させる方法」こんな素敵な文句を入れるから、日本の原発はコストダウンを中心とした危険性を孕むものって言われるのかもしれません・・・

特許広報の文言を眺めていると、水素の発生には2種類あることがわかります。通常の運転に伴って、放射線の影響で水素と酸素に水が別れるやつが出てきます。この水素と酸素の組み合わせで起こる事故を防ぐための方策が結構色々とあることがわかります。しかし・・・

例のジルコニウム合金の管と高温と高温の水蒸気がふれてできる水素に関する言及はあまりないようです。と言うことは、通常の運転による水素の発生量は少なく、ジルコニウムと水蒸気の反応による水素の発生が、今回の水素爆発の原因となるのかな?

面白いのは特許を眺めていると、「交流電源喪失が3日間継続しても静的RHRと静的格納容器冷却機能の組み合わせで原子炉を安全に冷却することができる。」なんって文言も見つかります。どうやら、原子炉で電力喪失が起こっても、大丈夫なように設計されていると言うことのようです。3日の猶予があれば何とかなるぞ・・・って東電の技術者が思っていても、国からベント、ベントって催促があったのではないかと思います。たぶん・・・

賢いことに、「原子炉は必要以上に減圧冷却されることはなく、高温停止状態を維持できる。この状態で、交流電源や給水の復旧が短期間で行われた場合には、原子炉を再起動することにより、直ちに通常運転に復帰することが可能である。」こんな具合に、致命的な状態でなければ、直ちに再稼動できる状態を保ったままで、電力なしに維持されるようです。ある程度の高温を保つように設計されている・・・こんなところに、人間が勝手に手を加えると・・・静的安定が保たれている状態を崩す作業に入ると・・・だめだよな・・・

「蒸気供給弁の開度を崩壊熱相当の約1.5倍にすると、およそ1時間で原子炉を冷温停止状態に減圧することができる。このように、本実施の形態の静的冷却減圧系を用いることにより、自動減圧系を作動させることなく、原子炉を冷温停止させることができる。このため、原子炉格納容器の下部が冠水する可能性を低減することができる。このため、加圧水型原子炉を冷温停止した際に、原子炉格納容器内部の機器に与える影響を小さくすることができる。したがって、交流電源が喪失した後、24時間程度以上の長期間が経過してから交流電源が復旧した場合であっても、プラントの大きな財産損失は回避できるので、比較的短期間でプラントを出力運転に復帰させることができる。また、交流電源が短期間で復旧した場合には、直ちに通常運転に復帰させることができる。つまり、本実施の形態の加圧水型原子力発電プラントは、電源供給の信頼性が高いということができる。」まあ、加圧水型の原子炉の例ですけどね。たぶん、こういった思想で原子炉は設計されているのでしょう。

ですから、賢い人はすばらしい!なんって私には思えるのですが・・・どうやら、原子炉と言うのは、何かの事故が起こって、緊急停止が起こったら、重大な損傷がなければ、人間なんかが退避して放って置かれても自分で、適当に操作員の帰りを待って、すぐに稼動できる状態を維持するように作られているということのようです。

じゃあ、今回の原発の事故と言うのは・・・まさか、単に国が騒いで、ベント!ベント!と連呼し、従わない東電に何らかの政治的な圧力をかけて、ベントを行わせ、その結果炉心が水蒸気と触れ、そこで発生した水素が大気中に放出されそれが爆発して建屋を破壊した、同時に、静的な安定で高温を維持しておとなしく待っていた原子炉内にホウ酸や海水を投入して原子炉を廃炉に持ち込んだ。さらに、自衛隊や消防士を危険に巻き込み、まだ十分な量のある使用済み燃料プールをあふれさせ、あふれた水が蒸発して濃縮された水で、風評被害をもたらし、福島や近県の農作物に壊滅的な打撃を与えたと言うことになるのでしょうか?

口封じのために、国有化して・・・なんって、考えすぎでしょうが・・・

しかし、ベントと関係なくヨウ素などの放射性物質が大気中に検出されたのは?たぶん、気体の溶解度は温度が高くなると低くなり、水に溶けていた気体が出てくると言うやつかな?ヨウ素の溶解度は・・・0.33900g/100g(25℃)他のデータはわからないので・・・でも、普通に温度が高くなると溶解度が低くなるのであれば、使用済み核燃料プールの水の中に解けていたヨウ素などの気体になりやすい物質は水から出てきて、建屋内の温度が上がると換気装置が働いたら・・・建屋の外に現れてもおかしくない・・・

もしかしたら・・・国が原因を作ったのかな?ちょっと気になります。そりゃ、人間の技術と言うのは、意外と穴があって、自然はそこに付け込むことがありますが、どちらかと言うと、人間のわけのわからない感情的な動きによって、技術を蔑ろにすることがあるのでね。

まあ、いい加減な小学生相手の理科のソフィストのたわごとですが、これが現実だったら・・・面白い、いや怖い・・・人間がね。
(2011.3.28)

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