現在をうろうろ(1444)
日本貧窮者経済新聞
 精密機械工学に則ったフランス製の古いフルート

 このところ、フルートが面白くて・・・ちょっと、歴史的なものを考えているんです・・・先日、非常に残念なことに、フランス製のフルートを落札し損ねたんです。ちょっと仲間と飲んでいて・・・あれ?終わっている・・・ってね。7000円ぐらいで終了、非常に残念でね・・・そうしたら・・・ちょっと、高くなっていましたが、再出品されていて・・・ぽちっとやっちゃいました。うれしくてね・・・送料がちょいと高くて悩みましたが・・・これが、フランスの精密工学の応用物で・・・凄いんです!

 戦前の工業国の先頭にいたフランスの面目躍如という感じでね・・・中国製のフルートのシャフトが、締めこむとキイが動かなくなるというやつも理由がわかりましたね。工学的には、締めこんで動かなくなるのは正しいと認識していましたから・・・軸受と軸の関係でしたから・・・そして、調整のために精密ドライバーが付属するのも・・・ただ、気になったのは緩み止めのネジか何かがあっても良さそうだという事ですね。

 ええと、新しく買い込んだフルートは・・・フルート自体はオーギュスト・ビュッフェ Auguste Buffet ってブランドのものです。このフルートの正確な製造者は良くわかりませんが、ビュッフェ・クランポンのビュッフェの一族のものと思われます。初期のベーム式フルートを作った楽器関連事業を行っていた一族ですね。オーギュスト・ビュッフェ ってブランドは2代続いたようですが・・・その後は不明・・・1920年代に消滅したようですから、ですから少なくとも90年は経っているフルートですね。

 もしかすると・・・1880年代辺りからのものかもしれませんが・・・ざっと調べると・・・このブランドは、パリ西方65kmほどの街のラ・クチュール・ブッセ の楽器職人あたりからたどれそうです・・・あらましは・・・

 デニス・ビュッフェ・オージェが楽器製造をラ・クチュールで行っており、1925年にパリにも工房を持つようになります。このオージェの息子のジャン=ルイ・ビュッフェが、現在につながるクラリネットで有名なビュッフェ・クランポンとなり、その弟のオーギュスト・ビュッフェ・ジュヌが、1813年にラクチュールで楽器製造を開始し、1830年にパリへ工房を移します。この後、ベーム式フルートの機構を利用して、現在に続くベーム式のクラリネットを製造します。そして、兄のジャン=ルイ・ビュッフェが1830年ごろにオージェのパリの工房を仕切るようになり、1841年にオージェが亡くなりジャン=ルイ・ビュッフェの事業になるようです。というわけで、ベーム式フルートを作り、この機構を利用した現代につながるクラリネットをこの兄弟が完成させていくという事のようです。

 そして、父親の死を契機に・・・兄弟はどうやら別々の道を歩むようです・・・とにかく、オーギュスト・ビュッフェ・ジュヌは1864年まで生き、その事業は息子のルイ・オーギュストビュッフェに引き継がれます。ルイは木管楽器に関する特許を1859年〜1862年にいくつか取得しているようです。そして、1884年に死亡しています・・・その後の事業に関しては不明ですね・・・まあ、こんなところです。したがって、かなり古そうですね・・・しかし、このフルートは現代のフルートの機構と変わらないものですね。とくに古さは感じさせない・・・だって、手工芸品ではなく、機械工業製品なんですから・・・

 この古そうなフルートがね・・・キイカップなどは削り出しなんです・・・左の写真で上がムラマツM-180、下がオーギュスト・ビュッフェのものです。信じがたいのですが、キイカップはアームはロウ付けではなく、機械加工が為されています。フライス加工でアームと一体で削り出されているようですからね。鋳造品かプレスした素材を削り出した物のようで、フライス盤の刃物で削った特徴的な跡が残っていますから・・・キイカップの内側も中刳がフライス加工されていますから、キイカップの内側の底は平面、そこに、ネジが・・・。

 つまり、この製品は手工芸的な工房で作られたのではなく、精密機械工業製品だという事なんです。

 メッキの質は極めて良質ですね。まあ、これはね・・・第二次世界大戦の前には、すでに銀メッキの技術は確立していますから、ドイツの特許の銀メッキは非常に硬くて質が良いですね。この時代のフランスやアメリカの銀メッキはドイツのより柔らかいような気がしますが・・・流儀の違いですかね?タンポは表面が固くなって残念ながらスキンはハンドクリームでも柔らかくなりませんでしたが、きわめて良質なタンポなんですが・・・ちょっと厚い・・・一応、張り替えをしたんですが・・・フエルトは織フエルトでこれまた上質なものですけどね。

 キイカップは、昨今のプレス加工品ではないので・・・右の写真のように内側の底は真っ平に削り出されています。何だか、近頃の高級ハンドメード製品の方が原始的に見える・・・

 さて、このフルートはさすがに古くて・・・針バネの穴が多少広がって、いくつかの針バネがきちんと働かない・・・回っちゃうんですね。針の端が潰してあって、正しい形状なんですが、きちんと止まらないので・・・太いばねを入れるか穴を修正するか・・・考えた末に・・・面倒なので瞬間接着剤で・・・当面はOKのようですね。針入れ用のペンチが欲しくなりますね。100円ショップのペンチを改造するかとか・・・考えるわけです。特殊工具は高価なのでね・・・ラジオペンチの片側の先に糸鋸を入れて割れば良いわけですが・・・面倒だな・・・というわけです。

 さて、左の写真なんです。軸受の部分なんですが・・・管体の上の帯金の上に立つポストの脇に緩み止めのネジが入っています。この、フルートのシャフトなどの長さの精度は、現代のムラマツの精度と同じぐらいですね。バネなどひっかけてテンションをかけたまま押し込むと入らないですから・・・特に、長いシャフトの入る部分の精度は極めて高いようですね。

 さすがに、多少すり減っている部分もありますが・・・かっちりと組むことができるフルートですね。

 これが、昔のフランスの工業技術なのかと・・・かなり、びっくりですね。ベーム式の金属製のフルートが現れたのが1832年で、1847年に改良型を発表・・・ブリチャルディ・キーがついているから1849年以降で・・・多分1860年代以降の系譜にある1920年代までの間のフルート・・・

 恐るべし、欧州の精密機械工業・・・ちょっと、気になるのが、中国製の安物フルートが・・・キイカップはプレス加工なんですが、内側がフライス加工がされていて・・・安物らしくない加工が為されていることですね。中国製の工作機械の精度がかなり上がって、しかも安価なようですからね・・・禁輸処置がとられるような工作機械も中国は大量生産をやっているようですから・・・カタログでは間違いなくその精度が記されていますからね・・・

 ああ、このフルート用に、いまついているタンポより0.4mmほど薄いタンポを製造しなきゃ!面倒ですね・・・ああ、このフルートは足部管のタンポのサイズも同じみたいですね・・・ボール紙は、3本入りのカセットコンロのボール紙の厚さがちょうどよいので・・・また、100円ショップの安物フエルトとの組み合わせでのカラフルなタンポがぴったりですね・・・水色が良いかな?

 しかし、このフルートの機械加工の様子って・・・最新の日本製のフルートも同じような事を言ってますからね・・・ミヤザワのフラットカップとか・・・なかなか、工房は精密機械工業へは転換できないのか?なんてね・・・

 あと、このフルートの特徴は・・・非常に正確な440Hzフルートで、管の温度が変化してもこの周波数ですね・・・合金の質が良いわけで・・・多分、ニッケルと銅の合金かね?熱膨張が小さそうですから・・・あとは・・・歌口のカットが近頃の楽器とは違って、かなり強い内吹きを要求することですかね・・・音は、ムラマツと違って繊細・・・細いですね。低音の倍音が少ない・・・非常にあっさりとした音ですね。非常に遠くまで通りそうな音です。ただ、かなり強いビブラートをかける必要がありますね。ビブラートをかけると、途端に元気な音に代わる・・・これで、中国製のフルートでも似た傾向の音なので、ビブラートを少し余計にかけると良い感じになることがわかりましたね・・・途端に元気になる・・・ふむ、奏法が微妙に米国向けと欧州向けでは違うのかね?

 なんとなく、奏法の違いがあるような?とにかく、また1本遊び仲間が増えたような感じですね。まだ、本調子ではないですが一応音は出るので、近いうちに気合を入れてタンポを作らなきゃ!

2015.12.26

  

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