アンティークな?蓄音機とSP盤(2)

 さて、蓄音機の構造は・・・機関部とホーンの2系統があって・・・一応、現状での音出しをしてみました。ついて来たSP盤をざっと見ると・・・グレンミュラー楽団のインザムードとかあるし、軍歌も都々逸も民謡、長唄、挙句の果てには、近衛文麿首相の演説・・・日独伊三国条約締結に際して(三・四)ってのがあるし、これって グンキ なんって書いてありますが?・・・キングですね。紛らわしい・・・商標のKINGを見た目でグンキを見て、説演ですからどうも分かりにくい・・・洋楽の邦題は左から書いてあるのに・・・歴史的な音源ですが、こういったものを聞く気にはなれず、インザムードを掛けると・・・廻らない・・・トルクが足りないというのは確かでした。

 このインザムードはずいぶんと掛けられたのか、センターホールが崩れて一回り大きくなっていました。

 別な、もう少し状態の良い盤を掛けると、それなりに音になってくれました。そして、1曲演奏するだけのパワーがゼンマイに蓄えられていることが確認できたので、とりあえず満足・・・しかし、音量が足りません。原因は・・・ホーンの中に布でも?というわけではなく、ホーンの所に丸く切って中央に小さな穴の空いた紙があって・・・なるほど、こいつはダイヤフラムが駄目になっていると察しがつくわけです。

 サウンドボックスを外してダイヤフラムを覗くと・・・周囲の無くなったダイヤフラムの残骸が見えました。しかし、このくらい残っているともう少しまともな音がするのですが・・・針に触れてみると・・・針が動かない・・・サウンドボックスにしっかりと固定されているという感じ・・・これって・・・よく見ると、針の振れを制限するための調節ねじで針が自由に動けない状態になっています。右の写真のAとBですね。この2つのねじが針を支えるカンチレバーを固定してCのダイヤフラムへの伝達を押さえていたという事のようです。

 あれ?カンチレバーって、この構造の蓄音機の場合不適切な用語かね?スタイラスバーとか、その形状からトンボなんって言われるようですが・・・カンチレバー=片持ち梁・・・まあ、片持ちか・・・蓄音機の用語を説明した本でも買わねばいけないのか?蓄音機・蓄音器・・・どちらが正しい?こういったのも気になりますね。

 とにかく、これでも、箱へ音声振動は筺体に伝わるので、小さな音はするわけです。本来は、ダイヤフラムへ振幅を支点から針先まで2cm、支点からダイヤフラムまで2.4pほどですから1.2倍ほどに振幅を増幅する部分を殺して使っていたことがわかります。まあ、この方が空気を空振りしているダイヤフラムへ伝えるより大きな音になるのか?ちょっと疑問です。

 とにかく、ダイヤフラムを外してしまったし、振幅制限のねじは適当に針先が動ける程度にしましたが・・・SP盤の針の振幅ってどれくらいなんだろう?・・・音溝は1pあたり30〜50本ということは、25本という荒い奴なら針の先端の振幅は0.4mmぐらいは必要か?こういったものって分からないんです・・・資料があるのか?不明・・・ダイヤフラムを手に入れるか作るかしたら、何枚か盤を聞きながら調整することになると思われます。

 とりあえず、スタイラスバーを分解して、中のベアリングに給脂を行い、滑らかに動くようにしておきました。この部分の締め付けトルクの指定はどのくらいかね?車のハブベアリングの分解整備などは、ずっと以前はやりましたが・・・ガタが感じられないあたりを狙いましたが・・・グリスなんかも指定があったのかもしれませんが、そういったものも分かりませんね。まあ、この時代のグリスってそんなに種類が無いのでは?なんって・・・規格というよりXX社のXXって指定があるとか?グリスの稠度は、この手の荷重の小さな軸受けだとO号あたりが使われていたのかね?フレッチングなどは起きそうもないから・・・00号あたりでも使えば良いのかもしれませんが・・・実際に使ったのは、手持ちの1号あたりと思われるやつですね。近代デジタルライブラリー - 潤滑読本 19コマ グリース どうやら、昭和18年の本ですが、グリースに関しては規格は成立していないようですね。従って、潤滑油ならなんでもOKという事なんですかね?ん?近代デジタルライブラリー - 臨時日本標準規格. 第1 58コマ これでは、グリースの試験方法が示されていますね。カップグリスは3種類に分類され、稠度からすると、この時代の3号、現在のなら1号に相当しますから、どうやら適当なものかと思われますね。

 ネットの中でうろうろしていたら、コロンビアは鉄の箱のポータブル蓄音器を1930年代にモデル100として製造したようです。Columbia 100 portable これも悪くないですね。サービスマニュアルなど無いのか?気になるところです。そういえば、ジュークボックスのマニュアルを公開しているサイトとかあって、非常に興味深いものです。Jukebox Service Manuals SeeburgのLS1のをざっと見たらパラメトロンが使われていてちょっとびっくり・・・

 こんなものを眺めていると、ふと、私のいじり始めた蓄音機は戦後の製品か?なんって・・・占領下の日本で航空機技術を利用して高付加価値の民生品を生み出そうとしたものか?でも・・・私の所の蓄音機は戦後のもののなのか?メカニズムはコロンビアのG208のようですが・・・敵性語が商標に使われていますから・・・ただ、製品の性格からすると・・・昭和16年以降の製品だから・・・町中から敵性語の排除が目立つようになるのが昭和15年の駅などでの英字の使用が停止され看板が書きかえられる頃からですから、微妙な感じですね。こんなことからすると、終戦直後の製品なのか?

 こんなことを気にしながら色々と探しますが・・・

 残念ながら、蓄音器のサービスマニュアルは無いみたいな感じです。まあ、サウンドボックスに関しては上の写真のスタイラスバーを支える部分のトルクと、写真のAとBの部分の隙間調整の数値だけでOKなんですが・・・日本語のサイトにはこの手の情報が無いような感じです。ただ、こういった部品の工作精度の問題でマニュアル化できない部分があるのかもしれません。このスタイラスバーの工作精度は・・・やはり、職人仕事の範疇にはいるのでは?しかし、分からないのは、このA・Bの根寺なんですが、スタイラスバーをつけるといじりにくい・・・こういったものを調整するなら、ネジの向きが逆のような気がしますが・・・ロックナットは無い、スプリングでもかませた方が良いのでは?そんな事を考えてしまいます。

 ネジの取り付けがこれで正しいのなら・・・それほど気にしなくても良いのではないかと・・・つまり、民生品の工作精度は、米国でも、マニュアル化するのは困難な時代だったのでは?なんて思えるわけです。しかし・・・武器の工作精度は、数丁の拳銃やライフルを分解して、パーツを混ぜこぜにして組み立てて、ちゃんと動作することを実現していた時代のようで・・・コルト社がその先鞭をつけたとか・・・

 どうやら、整備マニュアルはなさそうなので、気合で調整しなければならないような感じですね。これで、数台の蓄音機を所有していれば、調子の良い奴悪い奴等を比較することで、良い状態のものがどんなものか?そういったものがわかるのですが、比較するものが無いので、ネット上の写真を眺めて比較するしかないのですが・・・さて、サウンドボックスをばらしましたから各部のサイズを測定して行きます。計測器は・・・100円ショップのノギスを愛用していますが・・・ゼロから作るのではなく、必要な材料を買いに行かなければならないので・・・出費が・・・

 というわけで、久々で計測機械を買い込みました。電子式のノギス・・・サウンドボックスの中のパッキン類の本来の厚さを推測する必要がありますからね。自分で何かを作る場合は、適当に集めてきた材料から作りますから100円ショップのノギスで良いのですが、計測した結果から、素材を選んで仕入れてくるとなると、それなりの計測具が必要になります。遊び場にもそれなりの計測具が必要になったので買い込みました・・・1200円位でそれなりのものがあるので安いものです。100分の1ミリ直読だぜ!なんてやっていますがね。

 分かったことは・・・ダイヤフラムが来ないことには分からないということですね。アメリカの工業規格をチェックしてみるのも手です・・・パッキン類などの規格があるはずです・・・インチとミリではどうも、日本の規格は呼び経とか混在するのでよくわからない部分があります。ある意味、日本の規格ってのが、分かる人にとっては問題ないのですが、水道用のパッキンと、別系統のパッキンでは微妙に違ったり・・・1ミリ弱の違いが同じ呼び経で1ミリ近い差があって・・・面倒・・・

 厄介なのは精密ねじ・・・数本不足していますから、どうするか?約2mmのネジ、メートルねじではないから、ジャンクのサウンドボックスを買って共食い修理か・・・食われた方はメートルねじに切りなおすか・・・それとも、メートルねじを切ってしまうか・・・今度はタップが問題ですね。

 手持ちのでは・・・眼鏡用があって、これはは1.4mm程度のメートルねじでしたっけ・・・このあたりの精密ねじの規格が問題ですね。

 ゴム部品の本来の厚さなどが測定しても不明なんです。変形するものは厄介です。Oリングだと8%から30%ぐらいのつぶししろを取りますが・・・サウンドボックスのようなものでは10%ぐらいでいいのかな?なんって・・・色々と考えるわけです。大体のサイズがわかりましたから、ゴム板を買い込んできて、いくつか部品を作ってみることにします。

(2013.11.26)














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