ネットの中をうろうろ(22)
  中朝国境に何が・・・(22) 茂山
 
 さて、右の写真は茂山の鉄鉱石を中国側に受け渡す橋の近辺です。巨大な選鉱場があって、鉄鉱石をより純度の高いものとして加工しているとのこと・・・鉄鉱石も昔と違って選鉱するんですね。ある意味、良鉱石の枯渇と言えるのかもしれませんが、前処理が良ければ生産は楽になるということなのでしょう。

 そして、製錬技術も進歩していて・・・古い鉱山のズリを再採掘したりもしてますね。炭鉱のズリ・・・ボタ山を採掘して水洗式選炭で石炭を生産とかね。

 さて、ここでの選鉱は何なのでしょうか?鉱山でも選鉱をしているはずですから、ここでは二次選鉱?湿式の磁力選鉱なら鉄山の浮遊選鉱とかと組み合わせた方がよさそうな?ここでやる必然性は?電力の関係かな?

 近頃の製鉄業はどうなっているのでしょうか?ちょっと気になります。最新の製鉄って・・・私の頭の中には、コークスと鉄鉱石を焼成したペレットを使うやつが入っていますが、おぼろげに・・・酸素を分留して使うやつとか、粉炭と鉄粉鉱石を焼成したものでやるやつとかの記憶が・・・

 さて、近頃は製錬に入る前の前処理が多いという言うことなのでしょう。空気から酸素を取り出してとかは驚いた記憶が・・・酸素って反磁性体だから、磁力選鉱ができるのかな?とか・・・

 とにかく、中国は大きな資本を投入していることは間違いありません。このあたりで鉄鋼に関する事業体は・・・和龍鉄鉱加工工場・吉林天池鉱業有限公司原鉄生産などがあるようです。

 さて、道をたどって茂山を眺めるとしましょう。近道は山越え、トラックは川沿いのようですね。ん?治水を行っている・・・橋のたもとで重機が作業をしています。2007年と比べると川幅が半分になっている・・・高水工事か・・・それとも、鉱山開発によって堆積物が急激に増加したために河床が高くなり治水工事の必要が生じたのか?ここで流速を上げると、下流に影響が出るはず・・・

 山沿いの道を越えると巨大な長屋が・・・長さ100mが12棟・・・1200世帯、いや学校が無いから・・・独身寮5000〜8000人は収容できそうな・・・よく見ると、建設中のようです。そして、この時点で使われているのは3棟のようですから・・・これから大きな発展が見込めるのでしょう。・・・いや違う、この建物は放棄されつつあるような感じです。古い鉱山住宅?

 しかし、この建物群の存在意義が分かりません。鉱山まで4kmですから・・・まさか、兵舎?大正8年頃に茂山に兵舎を新築するとかの書類は目にしましたが・・・

 一応は茂山の市街まで山越えの道はチェックしましたから川沿いを眺めると・・・あれあれ、洪水被害が出てますね。豆満江と鉄山からの支流が合流するあたりに、逸流した痕が・・・これによって、鉄鉱石の輸出ルートが切断されたことになりますね。2009年の復旧の状況は右の写真のようなものです。問題は、この道路を流した洪水がいつのものなのか?それが問題・・・とりあえず通行可能な状態にありますが・・・何日間輸出が止まったか?

 2009年9月23日の衛星写真だから・・・気象庁のデータを眺めても・・・梅雨の時期のものか、台風8号か、台風14号か?特定できません。

 しかし、この道路はなかなか厄介なもののようです。2007年2008年2009年の写真を見比べると、左の少し上流の位置では、毎年道の位置が変化しています。これは何?






 結構、この川は動いているということのようです。左写真は2007年、ロールオーバーすると2009年耕地と、道路の分岐点を基準にしていますが、なかなか良い精度で動いてくれませんが、50m程度、川筋がちょこちょこ変わるような感じです。

 こりゃ本気でもう1本ぐらい道を作らないと安定供給はできないのでは?なんって思えます。2012年はどんな状況だったのでしょうか?気になりますね。

 山が荒れれば、川も荒れるというやつですが・・・河川の傾きが大きいが厳しいところですね。山の斜面もきわめて急だし・・・森林でどれだけ水が止められるやら?

 そういえば、砂防工事が行われていませんね。砂防を行わないと・・・急流対策にならないし・・・下流では土砂が流入して、堤防などの働きを弱めてしまう・・・

 どうも、治水に関する投資の仕方がちょっと変なのかもしれません?毎年、堤防を嵩上げしなきゃいけない状態にあるのか?

 さて、茂山といえば、鉄の鉱山があります。右の写真のようなやつ。写真の縦はおよそ4km横6kmぐらいですか。広い範囲での露天掘り・・・昭和12年ごろはそれほど大きな鉱山ではなかったようですが・・・今や巨大な鉱山となっています。

 それでも、茂山は會寧と並んで大きな邑で間島地方との交易が多く、冬期の穀類の輸入が多く、豆満江の伐木は茂山で筏を組まれ、會寧に送られるとのこと、飲料水は不足気味で、付近に流れる城川の水を使うとのこと・・・

 さて、鉱山の規模は分かりました。機材をチェックしていきましょう。ここの場合は露天掘りですから、重機でバリバリ掘って、ダンプで運び出して、選鉱して出荷ですかね。

 左のような大型の油圧ショベルがうようよいます。そして、階段を作るようにして山が削られ、鉄鉱石をダンプが積みだして行きます。

 そして、この鉱山は、ずいぶんと遠くまでズリを捨てているようです。

 コンベアシステムの多くは、ズリを捨てるためのものか?

 どこが高いのか低いのか判別しにくい・・・

 機材は更新されているようです。コンベアシステムなども変更があるようです。選鉱所はどうなっているのか、そちらをしっかり見るのも良いでしょう。

 右の写真が選鉱場の全景ですね。左の方に沈殿槽、シックナーって言われるやつですね。そういえば、こいつは下水処理でも使われるし、パルプ工場などにも使われますね。會寧の支流沿いの工場はパルプ・製紙工場である可能性が高いようです。

 直径は50mほどありますから、結構大規模なものですね。これはいつの時代のものやら?
 見た感じ、合計6基のスペースがあり、使用可能なのは2基か?いや・・・シックナーって水が入ってなかったっけ?スラリーを真ん中に放り込んで、中をレーキーでかき回すと、泥状のスラッジとして沈降して濃縮されるというやつ・・・これは使われていないのか?

 2008年の映像では左の4基のシックナーの中央へスラリーを投入するコンベアが接続されていますが、2009年のではそれが確認できませんから、使われていないということのようです。

 ここではどんな選鉱が行われているやら?選鉱・・・まさか手選、長いベルトコンベアーに人が並んで・・・まさかね。選鉱製錬試験報告. 第28回昔の選鉱に関する資料がありますね。ここの鉱石の分析結果では、鉄が41%二酸化珪素40%マンガン0.1%燐・硫黄0.2%ずつ、チタンなしぐらいがこのあたりの平均的な鉱石とのこと、鉄分50%程度の鉱石でも、硅酸分20%を超える。燐が多いから、満州産ののものとは違うから注意を要するとのこと。

 当時では、どうやらもっと鉄分を多くふくむ鉱石が利用されていて、このような貧鉱では売りにくいような感じです。そこで、こいつをうまく選鉱して良い商品へと変える研究が行われたようです。

 元鉱石を砕いて14メッシュ程度まで粉砕しただけでは、磁鉄鉱と脈石を分離することは全く出来ず、完全に分離するためには65メッシュより細かなものにしなければならないようです。そして、細かくなりすぎるとまた分離が悪くなるので焙焼して65メッシュぐらいが良いらしい・・・ウィルフレーテーブルを使った比重選鉱でも35メッシュでOK、焙焼した鉱石では10〜14メッシュでもそこそこ行ける・・・磁力選鉱は、今回の目的ではないので簡易なものとしたようですが100メッシュより小さくしないと高品位とはならない・・・風力選鉱は、35〜48メッシュでOK・・・浮遊選鉱は可能だけど、現時点では茂山のやつは・・・あまり芳しくない・・・とのこと。

 この結果だと、比重選鉱を行った後で、磁力選鉱が有効ってことですかね?選鉱製錬試験報告. 第40回 朝鮮産特殊鑛物の選鑛法(2)鐵鑛によると・・・昭和16年ごろの系統図です。

 荒く砕いて、大きさで分けて1回目の乾式磁力選鉱、さらに砕いて湿式磁力選鉱・・・磁力選鉱で回収できなかった赤鉄鉱をウィルフレーテーブルで比重選鉱を行っていますね。多分、現在も基本的に同じなのでは?屋根の下は見えませんが、大電力を使うようで、引き込み線が確認できます。発電所はどこか?ちょっと気になります。途中から送電線がはっきりしなくなりますが・・・どうやら、座標 42°04'31.61" N 129°29'19.24" E の右のダムの水力発電所から送電されているようです。

 なかなか大変な鉱山だということは分かりました・・・選鉱システムはOKだから・・・なぜ?ここにあるのと似たものを国境の橋の所に中国側は作ったのか?

 茂山鉄鉱は中国側が電気、機械設備、技術を提供し、合作で開発される・・・茂山の鉱石を買い込むのではないということですかね?すると、旧来の茂山の鉄は北朝鮮国内で使われるということですかね。

 まあ、中国がこの鉱山への依存度を高めれば高めるほど、鉱石の値段は上昇・・・選鉱にかかるエネルギーは・・・ダムだから・・・日帝時代のなら、初期投資は回収済み・・・かなりローコスト・・これに対抗して、新たに鉱山を開発し、その鉱石を中国側に運び込んで選鉱ということになったのでは?

 韓国情報では・・・天池工業貿易は鉄鉱石1トン当たり30〜50ドル(約2400〜4千円)の採掘料を支払っていたが、世界的な景気後退で鉄鉱石価格が下落する中、北朝鮮が20%以上の採掘料の引き上げを要求。同社は北朝鮮労働者の賃金や輸送費用などを踏まえ、利益が出ないと判断したという・・・これは事実でないとの話もあるし・・・案外、精鉱の買い入れを中止しただけか?巨額の投資が絡むものですから、こういった事は織り込み済みで、対応する約定があるのではないかと思うのですが・・・大昔の鉱山書、ゲオルク・アグリコラの De re metallica 1556年 などにも、鉱山を開いてはいけない場所として、暴君の支配地とかあったような記憶が・・・孫引きなので本文を当たってみたい気がしますね・・・そのうち・・・とりあえずリンクを張っておきましょう。多分4章 鉱山の場所 でしょう・・・

 政治にはあまり興味は持たずに、この街を眺めるとしましょう。

 まずは、気になるのは右の写真の学校のように見える場所です。座標は 42°13'39.47" N 129°12'49.97" E このあたりです。興味深いことに生徒と思しき人が並んでいます。

 二列縦隊で・・・300人ぐらいですかね?列からすると・・・小中学校かな?11ぐらいのグループに見えますから。この学区には・・・人口に占める小中学生の割合は・・・仮に16%とすると1900人ぐらいの住人がいるのか?なんって・・・日本だと11%ぐらいでしょうから・・・

 左は別の学校と思われるものです。整列していませんが、道にもかなりの人が確認できます。

 なかなか活気があるような?この国民の動きのパターンがあまりよくわかりません。どのような時間帯で働いているのか?衛星写真ですから、夜中は分かりませんし・・・GoogleEarthは撮影時刻までは表示されていませんので・・・まあ、推測は可能・・・影は真北より西寄りですから、真北から25度ほど西に影が伸びていますから・・・この日は秋分の日に近い、東経129度・・・太陽の南中時刻は12時24分ごろだから・・・午前中・・・多分・・・9時〜10時ごろと思われます。

 近くの学校も同じように校庭に人がいますね。道路と校庭の人を見ると、この時間が登校時刻なのか?もっと正確な時間の推測ができると良いのだが・・・ちょっと、気合を入れて眺めると庶民の生活が見えるかもしれない・・・こりゃ、もうちょっと茂山を眺めないといけないようです。

(2012.12.05)

inserted by FC2 system