歴史の中をうろうろ(12)
 日韓併合でどんな変化が・・・(12) 朝鮮の風俗e

 さあ、民間信仰第二部 朝鮮の風水を眺めて行きますが・・・なかなか良くわからない本です。朝鮮の風水に関する事例が沢山出ていて、風水の解説がごちゃっと並んでいるような感じで・・・しかし、興味深いものであることは間違いないのですが・・・最後まで、なかなかたどりつきません。風水の実例として、閔妃の話が出てきます。

 なんと、李氏朝鮮の第26代国王高宗の妃の閔妃は、祖先の墓の選定が良くて、妃を輩出する家系に生まれたとのこと・・・閔妃の先祖の墓は、李王家の洪陵の近くの非常に良い土地にあって、祖先が王妃宰相を輩出する家の墓として選んだものだそうで・・・結果としては、李朝末期の興宣大院君驪興府大夫人閔氏との間に次男命福、後の高宗が生まれます。そして、1866年に閔妃が高宗の妃として王宮へ入ります。ここで、大院君と閔妃が対立を始めるのですが、高宗が成人すると親政を宣言し、大院君は追放されます。その結果、閔妃の一族である閔氏が事実上の政権を握ることになります。そして、次の大の李朝第27代純宗の王妃もまた閔氏から出たというわけで、祖先の墓を良い場所に祀ると良いことが起こるとのこと・・・

 高宗の墓となる洪陵を作るときに、近くの600余りの墓を移転させています。このエリアの中に、閔氏の墓所があったのですが、この墓は動かされなかったので、墓自体の偉大さで、国王であっても動かせなかったとして、さらに有名になったとのことです。閔氏についても知りたくなってきます・・・

 橋をあまりかけたがらないのは・・・燕の巣の形をした良い墓があって、その墓に祀られたものの子孫は繁栄を続けたが、墓地前を流れる川に橋をかけたところ、家運が衰えてしまった。どうやら、対岸に猫岩というのがあって、橋をかけたために、この猫とのかかわりができて、燕の巣が食べられてしまったためだという話である・・・なんってね。

 色々な実例があるものです。こうなると、地形改変はあまりやりたくなくなりそうな気がしますね。

 現在の韓国の墓所はどんな感じなのでしょうか?ちょっと気になります。Google Earthの威力は絶大で・・・プサン近郊の大規模霊園を眺めると、こんな感じですね。

 航空写真で上から眺めると、風水に合致した地形の中に大きな霊園が拓かれています。土饅頭がありますから、多分土葬なのでしょう。日本だと火葬で、家の墓に遺骨が納めれれて行きますが、この形態だと1人1基の墓となるのでしょうか?

 骨に、木の根が触れることを嫌がりますから、航空写真で眺めると、山の中に木の生えていない部分の広がりがあれば、そこは墓地という感じです。

 北朝鮮の墓なども、なかなかすごく、かなり大きな山の一面に墓所のようなものがびっしりと広がっているところがあります。

 右の写真、松林市近郊の山ですが・・・多分、墓地なのではと思うのですが・・・情報が不足していて、確認はできませんが、全山禿げ山で土饅頭のようなものがあって、明らかに家屋ではないので多分・・・墓地・・・

 一応、風水の考えが入った土地の選択のようです。この地域、兼二浦・・・港を開いた工兵将校の名を取ってつけられた地名・・・三菱製鉄兼二浦製鉄所が置かれ、現在は黄海製鉄所と呼ばれているようです。

 さて、禁葬地ってのがあります。基本的には村落の北側にある山のようです。こういった山は、山の南の村落にさまざまな恩恵を与えてくれます。村落が栄えているところのこういった山は、基本的には良い墓所になるのですが、墓所とすると、村落の繁栄の元になる地脈の流れを阻害する・・・まあ、運気を吸い取られるということなのでしょうが、その結果、干ばつが起こったりするとのこと。そのため、禁葬地となり、勝手に埋める暗葬を行う場合、強く排除されることになります。こっそりと埋めると、夏の旱魃シーズンには山を探して暗葬が暴かれるというわけです。

 さて、イザベラ・バードが朝鮮には大廈高楼がない・・・そう述べているのは・・・風水では、朝鮮の国土は山がちである。そこに、高い建物を建てると・・・・山がちであること、これは陽、そして高い建物はこれまた陽で、地力を損なうから高い建物は不可ということのようです。高麗時代には仏教が流行り、地力の不足を高楼や浮屠で補えると考えたのでしょうかね?

 確かに、風水に彩られた国であるかもしれませんが、風水がさまざまなことにかかわっていたでしょうが、色々な統計資料を眺めると、朝鮮の自給体制はほぼ、整っていたことは間違いないようです。しかし、貿易が始まると、大量の米が、海外に流出します。金の流出は貨幣経済が十分発達していなかったために、それほど問題ないのかもしれませんが・・・銭相場の方が重要であったようですから・・・米の流出の影響は大きかったのではないかと思います。

 流出量はかなりのもので、日本商人の買い付けはかなりのもので、米相場のために、かなり早い時期から朝鮮と日本の間の海底ケーブルの敷設が行われ、回線数もかなりのものとなっていたようです。初期の取引は朝鮮の開港場客主と呼ばれる人たちと日本人の間で取引があり、それを日本で売りさばく形です。それが、朝鮮米の加工に日本商人が入り込み、買い付け加工出荷を担うようになり、朝鮮の開港場客主は滅びて行き、変わって植民地的新興商人が幅を利かせてくることになります。悪く言えば、搾取の基盤ができる、良く言えば市場経済が浸透して淘汰される・・・貿易により、新奇なものが入り込む、米が流出する、副食物の雑穀も、酒などの加工品に変わり貿易を担うことになる・・・上層階層はそれなりに、貿易の恩恵を受けるが、下層階層の生活を直撃する形になる・・・人口は増え、生産も向上するため、インフレが広がり・・・物価の上昇、貨幣経済の浸透・・・のんびりした封建制が消し飛び、生活と金のための労働が・・・

 案外、このあたりの急速な変化が、風水を表に出してきたのでは?海外との貿易が始まって、巨万の富を一夜にして得るもの、零落するもの・・・商品経済から取り残され、さまざまな新奇なものを目の当たりにするが、その埒外に置かれる人・・・時の流れに抗するためには・・・文化の基層の闇の部分・・・信仰の世界・・・そうだ!墓だ、祖先崇拝だ!墓を移して開運だ!何、禁令、共同墓地しか認めないだと!

 最後の希望も・・・公衆衛生などの観点で否定されてしまいます。闇の力が独り歩きする基盤が醸成されますね。こう考えると、墓制の外からの圧力による変化というのは社会的な影響が非常に大きかったともいえる気がします。日本だって、明治になって淫祠邪教として弾圧を受ける宗教団体がぼろぼろ出てきます。これも、開化に照らされた部分の闇に生まれたもののような気がします。淫祠邪教・・・これも、資料がいっぱいあるでしょうから、日本の開化によって現れた闇を研究してみるのも面白いかもしれません。

 私の中で、風水に対する視点が、ちょっと変わってきた気がします。非論理的、ではなく人の感情に直接訴えかける、同じ地域社会の紐帯に結ばれた人の間だけで認められる論理を越えた論理・・・ああ、未来は不確定で未来を定める論理はない・・・未来は論理を越えたものだから、論理ではなく合意の基盤を論ずる・・・これが風水なのかもしれません。封建制下の千年一日のような生活が・・・郵便だ電信だ電気だ鉄道だ・・・金がないと首が回らなくなる・・・金などどこにあるのだ?金金金!金への執着・・・地域社会の崩壊と再構築・・・経済の大きな発展は、大きな闇を生み出し、闇の論理が大きく育つ・・・

 闇の力は、人々の行動力も高めます。論理ではないから・・・他人の墓を暴き遺骨を水中に沈め、自らの祖先の骨を良い地へ導く・・・共同墓地には人形の入った棺を埋め、遺体は風水の導くままに良い場所へ暗葬・・・共同墓地には2割ほどしか本当に埋葬されている遺体はないだろうとか、埋葬許可証と死亡届の件数の差・・・社会の急速な変化が風水の横行へと走らせたような感じです。

 このところGoogle Earthで北朝鮮などを眺めているのですが・・・ほぼ国土の全域が高解像度の画像で眺めることができます。非常に興味深いものです。風水など関係ないような広大な鉄山の露天掘りとか・・・中朝国境地帯の様子とか・・・赤や青のトタン屋根と思しきものや・・・工業地帯が活性化しているような気配とか・・・北朝鮮の情報は少なすぎますね。しかし、国土全体に渡る高解像度の衛星写真があるのですから、ある程度推測できるような気がします。こちらの方も興味が・・・衛星写真から推測できる北朝鮮なんってのも面白いかも?墓より、生きている人間の世界・・・これが面白いかもしれません。
(2012.11.05)

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