日本国憲法は・・・?(5)

 続いて第三章 国民の権利及び義務 なんですが、こいつは長いですね。

第三章 国民の権利及び義務

第一〇条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第一一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第一二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 国民たる要件か・・・これは国籍法の規定ですね。
第一条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
 (出生による国籍の取得)
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
 一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
 二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
 三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
 (認知された子の国籍の取得)
第三条 父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
 2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
 (帰化)
第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。
 2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。

 ちょっと気にしたのは・・・非国民!お前は日本人じゃない、国籍を剥奪して追放する!という規定は出生による日本人には無いようです。選択の宣言による者は・・・事情によっては、法務大臣は日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。というのがありますね。

 さて、第一一条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」 基本的人権は取り上げたりはできないとされていますね。永久の権利・・・ありがたい話です。問題は保障されてもそれには、さまざまな制限があることです。十二条にはそのことが書かれているわけです。先ずは注意書き「自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」努力しないといけないんです。悪い政治家は、この権利を奪い取り・・・自分の思い通りになる国にしようとしますから。だから気をつけていなさいということなんでしょう。全権委任法を・・・とか危ないんです。有名なのはなんといっても非常事態だ!って議会が行政府に立法権を委譲する法律です。1933年のドイツでヒトラーの政府に立法権を委譲した法律である「民族および国家の危難を除去するための法律」ってやつです。このとき、オットー・ヴェルスによって最後の自由の弁論が行われました。Wir sind wehrlos aber nicht ehrlos.・・・我々は無防備である、しかし名誉がある・・・とか、Freiheit und Leben kann man uns nehmen, die Ehre nicht. 自由と声明は奪い取ることはできるが、名誉はそうはいかない。・・・でも、名誉だけでは生きられないのが厄介な所なんですね。

 そして「国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」ってね。 近頃は、国民は自由や権利の乱用が目に余るなんって考える人たちもいるようです。だから・・・緊急令による人権の停止をもくろむ憲法草案などを考えるわけです。ヒトラー政権の行った全権委任法は・・・一応、時限立法のようで・・・ヒトラーの内閣に立法権を与える、政府立法は憲法に反することも可、法令認証権は大統領から首相たるヒトラーへという内容です。

 ちょっと全権委任法を調べていて興味深い本に出会いました。近代デジタルライブラリー - 最後に笑ふ者って本、著者は黒田礼二は木曜会に参加した岡上守道ですね。ジャーナリスト・・・

 この本を眺めると、どうやら一次世界大戦敗戦後のドイツに対して同情的な視点を持った人々が日本にいたということのようです。アルベルト・レオ・シュラーゲターは、ヒトラーの「わが闘争」で見た名前・・・あまり気にしていなかったが・・・なるほど・・・

 それは良いとしても、どうもこの時代のドイツは議論疲れしているらしい・・・よって、感情的なヒトラーに流される・・・などなど、ヒトラー、ナポレオン・・・権力機構の改革者について論じてますね。クロムウェルも出てきたぞ・・・優れた統治者なのか?それとも独裁者なのか・・・微妙な評価・・・王にならなかった独裁者か・・・しかし、良い分析をしてるんですが・・・

 色々と並行して本を眺めていると・・・米英の軍服を着た人が的になる日がやって来ました。写真週報の表紙・・・勇ましいのですが、戦争なのです。

 そして、その数号あとの記事に増税の話が出てきます。そして、歳入は60億ほどになるので、予算的には万全であると・・・

 英米の増税にも触れられていて・・・開戦直前のレートは1ドル4.25円程度のようですが、年収4000ドルの扶養家族のいない夫婦の世帯では納税額は249ドルとのこと、英国だと1400ドル・・・ふむ?年収17000円、月収1417円か・・・アメリカは6.2%英国は35%か・・・我が国は?月額150円では10%・・・英国の月収1417円手取りは920円・・・月給100円のサラリーマンと比較するなよ・・・なんって思いますが・・・愛知県知事1級は昭和16年で年俸5500円ですね。月収460円弱・・・勤労所得については日本は累進課税を取っていなかったようで基礎控除は年額600円、税率10%、賞与は22%とのこと・・・海外の比較は何のために書いたのか?アメリカの税率は低く、英国の累進課税は高い・・・残念ながら英国の年収1200円程度の税はどの位だったのやら?

 さらに4960ポンド以上の年収があると97%の所得税?この頃の1ポンドは4ドルだから・・・月収7000円だと97%の所得税になる?手取りは2000円ほど・・・超高収入だと97%取られても金持ちで居られる・・・ということか・・・しかし、数字の魔術を駆使して、事実を使って人を欺くという素敵な技を使うのか・・・とね。

 この年の貯蓄目標・・・230億円どうすればこの貯蓄額になるのやら?戦時経済はなかなか厄介・・・太平洋戦争の戦時経済の分かりやすい研究書って無いものか?

 そして・・・大東亜戦争3ヶ月間の大戦果!と言っても、アメリカは780億ドル・・・3300億円の予算、対する日本は240億円ぐらいですかね・・・10倍の国家予算を注ぎ込んでくるということが分かってるようですから・・・これでも戦うか・・・そして、昭和17年の段階で、労働力の不足が顕在化していて・・・リストラが開始されています・・・中小企業の合併、効率化ですね。そして不急産業の整理・・・企業許可制・・・パン屋の主人が旋盤工になったり・・・残念なことに小さなパン屋には粉が回ってこない・・・よって廃業、転職となるわけです。しかし・・・パン屋のプロが、見習旋盤工へ転身か・・・これって有意?ってね。しかも、2000円かけた店の機材を屑屋に130円程度で売り払い・・・これですからね。それから、食品見本の製造業を営んでいた人も・・・ある日、ドイツからの輸入品の特殊パラフィンの入荷が途絶えて・・・機械工へ鑢がけ作業・・・

 戦時って・・・プロを戦場へアマチュアを促成して後方ってパターンになるようです。はたしてどの程度の能率だったのやら?これが、日米開戦半年も経たないぐらいの話です・・・

 ふむ、国家戦略のアニメなども不急産業になって、整理の対象になるのか?それとも・・・戦意高揚アニメの作成を行うようになるのか?なんって・・・ふと、考えてしまいます。戦時下のアニメと言えば・・・桃太郎の海鷲 桃太郎 海の神兵 とかですかね?右のスクリーンショットは海の神兵の方ですかね・・・降伏するところ・・・ 

 戦意高揚なら、必要な産業・・・ただ・・・統制されますから、トップブランドだけが生き残ることができるということになりますかね。

 しかし、この頃のスローガンに・・・

 一をもって百千に当たるのが日本人のやり方だ。頭数だけ並べて仕事をしようなんて、それは英米式だ。量より質、より磨かれた技術、生産の方法にも新工夫を!自分で出来る仕事は他人にまかせるな。遊んではいられないぞ。舞台は広くなったのだ、もっともっと、人が要るのだ。

 こんなのがあるわけです。どうやら、精鋭主義でも間に合わなくなって・・・精鋭がもっと必要になっているということなんでしょうか?兵員の動員を行うと産業界は人手不足・・・女子供も動員して・・・ということになります。おかげで女性の地位が向上しましたが・・・

 大東亜戦争が始まって半年もしないうちに・・・物品は市場から消えて行ったような感じです。「良賈は深く蔵して虚しきが如し」という具合に、良い商品は隠され・・・XXあるかい?ない!でも・・・実は、隠匿物資となっているということのようです。そのため、経済警察なるものも登場して、闇商品の摘発が始まるということになるようです。

 戦争では、さまざまな物資が不足していきます。航空機の増産・・・アルミ合金に使われるマグネシウムが豆腐製造と競合します。海水に含まれる塩化マグネシウムが冶金と豆腐製造どちらに向くか・・・当然、冶金へ・・・従って、豆腐製造には代用品の硫酸カルシウムが使われるようになり、豆腐の味が落ちることになります。戦争は普通の物の味も毟り取っていきます。

 海軍記念日の明るい話題・・・そして昭和18年5月29日には・・・アッツ玉砕、アッツ島の守備隊は約2600名、生存者は1%・・・ほぼ全員の死亡です。これが戦争の実態なのです。そして、増えるご飯の炊き方などが紹介されるようになります。熱湯を2升沸かし、それに米を洗わずに入れて、大きな杓子で上下かき回しながら、浮いてくるごみは網杓子ですくい取り、米が煮立ってきたら火を弱め50分間そのままにしてやると・・・3割ほどは炊き増す事ができると・・・糠の油も回って味も良い・・・しかし、3割増しに見えても、熱量は2割5分ほど減少・・・腹が減る飯の出来上がり+燃料の無駄のような気がするが・・・背に腹は代えられない・・・

 着物の新調も止めよう!・・・皆でスフ1着分を節約したとするならば・・・とかの話へなっていきます。配給のための衣料切符も献納せよ!

 昭和18年の段階で、既に都市部の物資の不足は顕著なものとなっていたようです。しかし、戦場は遠く・・・なんとなく、物資不足の不満が巷にあふれていたような感じです。

 政府の広報紙は贅沢はするなと叫びますが・・・南方は明るい?なんってやってます。どうやら、徐々に戦線が縮小しているのに、内地では緊張感が足りなかったのでは?そして・・・明るくふるまうことで、あまりうまくいっていない戦争を糊塗しているような?そんな感じですね。

 まあ、国の財政は昭和12年ごろには事実上破綻しているのでは?なんって思えますから。国債の発行、経済政策は統制と貯金の奨励・・・こりゃ、少し戦時経済について調べないと・・・平和の尊さや平和を維持することを理解しきれないだろうと思うわけです。

 ふむ、 近代デジタルライブラリー - アメリカ戦争経済批判 この本の冒頭に面白いことが書かれている・・・戦前のアメリカで大量消費を行っていた層は年収3000ドル以上の上級層で、これが納税者の85%だとさ・・・年収3000ドルって開戦直前のレートで年収12750円・・・県知事の収入の2倍を越えるよ・・・平均的サラリーマンの10倍超の収入が納税者の85%・・・金持ちの国アメリカだな。

 どうやら、真珠湾攻撃があるまでアメリカは戦争経済への移行は国としてあまり考えていなかったような感じです。とりあえず統括部署は設置しては見たものの、アメリカまで火の粉が飛んでくるとは考えていなかったような感じです。この本によれば・・・アメリカの軍事生産は、真珠湾攻撃までは民間ベースで行われていて特別な戦時体制にはなっておらず。英国への支援も国が特別な指導をして行われなくとも通常生産を少しシフトするだけでアメリカの工業力で吸収できていたようです。結果としては、軍需生産に不可欠な物資をアメリカ国内に蓄積するという事について議会も政府も一般大衆も何の注意も払っていなかった。また、こういった資材の買い付けに当たるものも緊張感を欠いていた。議会を通過していた軍需生産に関する法律を実施する中心人物に欠いており、軍需生産にシフトすることで失業者の増大を危惧し積極的ではなかった。しかも、軍需生産のための新工場の整備も非常時に基礎を置いたものではなく、緊急感を欠いたのんびりとしたものであった。というような感じですね。

 しかし・・・戦争経済に移行しつつも、終戦後の問題についても、戦争経済に移行しつつあるときに、既に研究が開始されているという手回しの良さ・・・まあ、第1次世界大戦の反動で苦労したこともありますからね。このあたり、日本はどうだったのやら?気になります。案外、貯金を奨励しておいて貯金税をかけて国庫へ回収とか考えていたのかもしれませんが・・・あまり考えているとは思いにくい・・・それは、今も変わらないような気がしますね。何しろ、このご時世に戦争ができる国の枠組みなどを考えているのですからね。

(2013.05.23)

  

inserted by FC2 system