嫌われやすいソクラテス・・・?

今度は、メノンなど読み返し始めました。ソクラテスとメノンの対話ですね。プラトンの著作・・・徳と言うものは教えられるのか?という物ですが・・・徳という文字が出てくると、どうも儒教的な徳のイメージがあって・・・論語の第二編の冒頭に政治は徳にしたがって行なうものだ・・・そういったことを思い起こしてしまいます。しかし、徳とは何か?こいつがまた問題になるわけです。

この2人のすばらしい著作は日本語で読んでいますから・・・どちらも「徳」の文字で同じ概念として捕らえちゃいますが、わずかにずれがあるというか・・・同じものでもあるような・・・まあ、自分の中で「徳」という概念を再構築すればよいのですから、あまり字句にこだわる必要もないような・・・と、とりあえず読むわけです。

久々に読み返して・・・ああ、私もまたソクラテスの徒なのだと思うわけです。私はソフィストですが、教えるときには起想法を使うので・・・その意味では異端かな。異端者の末路は、ソクラテスが身をもって示していますから・・・まあ、ソクラテスほど過激ではないけどね。まあ、ソフィストの中でも、知の探求は行っている方なんで、その意味でも異端ですね。

受験勉強は役に立つか?と聞かれると・・・役に立ちます!合格の・・・そして、ある事柄を忍耐強く行う能力を有することを証明してくれますと・・・これだけは確実ですね。そこで得た知識が、社会の役に立つか?というと・・・私のようなソフィストにとっては役に立つんですが、それ以外はちょっと・・・あまり、役に立たない・・・まあ、算術はある程度役に立ちますね。特に商売関連では・・・銭勘定は重要です。社会科の知識は?地理は旅行の役に、歴史は、人との会話の中で・・・理科は・・・なんだろう?自然に向き合うときの話題とか・・・

基本的に学校教育ってのは、その国の中で人とコミュニケーションを取るための共通の基盤を与えることに意義があるのでしょう。現実の社会の中では、企業内に方言があったり、業界用語があったりと・・・符丁の世界が取り巻いていますがね。そう、言葉と行動様式の基盤となっているのでしょう。それに対して、受験用の勉強はなんだろう?なんってね。

私の場合、ソフィストとしてのメインは、中学入試で、その中でも中心は理科・・・広汎なものですね。科学領域の全分野の基礎ですから・・・学ばなければならないことは山ほどあります。そう、ソクラテスが探求したように・・・何しろ、聞きたがり屋の子供に対抗して知識をひけらかすのはなかなか困難で・・・なぜ?それはなぜ?どうして?って説明を3回も突き詰められるとソクラテスを死に追いやった人々の気持ちがわかります。

そこに、追い詰められるのが嫌なので、詭弁を弄するしかなくなるか、それとも、信じてもいない神様を持ち出すかするしかなくなります。

確かに、ある知識の根元を極めようとすると、深く掘り下げていくと、曖昧模糊なものへとあるところで変異してしまいます。そう、先日針葉樹の耐寒性について聞かれたのですが・・・知識としては温かいところには常緑の広葉樹林が優勢で、それより涼しい四季のあるところでは、落葉の広葉樹が優勢で、それより寒いところでは常緑の針葉樹、さらに寒いところでは落葉の針葉樹が生き残るというやつですが・・・じゃあ、それはなぜ?と聞かれると厄介になるわけです。棲み分けなんって厄介な代物の原理は・・・

温かいところでの常緑の広葉樹が優勢なのは当たり前でよいのですが・・・何しろその土地をカバーする能力が高く、生産性も高いですから優勢と・・・じゃあ、常緑の針葉樹の耐寒性は・・・針葉樹は広葉樹より先に現れ、広葉樹との勢力争いに負けて、耐寒性の高いものが、広葉樹の限界より先で生き残った・・・まあ、そういう風に説明しておけばOKなんでしょうけど・・・じゃあ、どんな植物が耐寒性が高いか?となると・・・そりゃ、細胞が凍って死なないやつとなるのでしょう。じゃあ、どうやって細胞を凍らないようにしているか?・・・たぶん、細胞内の糖濃度か何かを高めて凍りにくくしているのでしょうが・・・だんだん、基礎的なことになるにつれて説明しにくくなっていきます。

多くの教師が、対話型のソクラテスのような授業をやりたがらない理由でもあるわけです。しばらく権威者の振りはしていられますが・・・あるところに限界があって、無知であることが暴露されてしまいます。ソクラテスは、それを回避するために、私は知らない!と宣言しておいてこの追求を逃れつつ、真理と思える事柄の探求をするというわけです。

詳しくは知らないけど、お前さんたちよりは長く生きているので知っていることは多いし、それなりに探求しているからある程度語れるよ・・・というわけです。

しかし・・・自然科学だと、最後は神のみぞ知る!で逃げちゃうことができますが・・・技術分野では厄介です。コピー機の構造とかね。そりゃ、ゼロックスが開発した技術の基礎はわかりますから、説明は可能ですが・・・こいつを詳細に噛み砕いて説明するとなると、1940年の特許である静電写真画像の原理から話を進めていけばよいのでしょうが・・・静電気による潜像の原理へと道をたどると・・・すぐに知識は原子のレベルになって・・・量子力学領域へ迷い込むと泥沼ですね。

基礎へ向かうより応用分野へのほうが説明は徐々に立派になって行くんですが・・・何しろ、目の前にあるこの製品に至る道なんで、ここにある製品の原理から、終点はこの製品で終わるわけですから。説明の終末がわかっている説明というわけですから。

ソフィストとフィロソファーの違いというのは、この辺りにあるわけです。そして、ソクラテスの死の原因もこのあたりにあるということなんでしょう。ソクラテスのやり口は、まず共通の基盤の設定から入ります。このことは疑うことができないものだよね!と誘いをかけます。これに同意した瞬間、対話者はソクラテスの毒牙にかかったも同然となります。

話の中で、何かに同意して、そこから話が発展していくとき、その前提を突き崩す行為をすると、間違いなく嫌われるというわけです。言質をとられているわけですからね。ソクラテスはそれを知っていてやったのですから・・・だから、著述はしない・・・プラトンは賢いから、ソクラテスに仮託して語らせたのかな?なんって思うわけです。

困ったことに、私もある意味ソクラテスの徒なんです。想起法などという、危険な教え方もしますし・・・良い教え方ですが、日本の教育システムの中ではあまり好かれません。理由は単純で、教室が騒がしくなるから・・・一発で何かを悟らせるには間違いなく優れている。ソクラテスは、この方法をうまく使います。

ある共通の認識基盤を設定して、そこから、納得できる道筋を積み上げて行って、互いの合意を見出したり。見出したと思わせて、その初めの認識基盤を揺るがすことで、相手を貶めるなど・・・典型的な嫌なやつだったのではないかと・・・

想起法・・・こいつの扱いは日本と欧米では扱いが違うような?メノン (対話篇) - Wikipedia ここでの扱いと、Meno - Wikipedia, the free encyclopedia の扱いが明らかに違うのです。

日本と諸外国の文化の違いを認識するにはWikiの記述の比較をすればよいことがわかってきました。まあ、日本型の学問の限界のようなものがね。

想起法・・・この応用面というのが、ちょっと、ある話題の中で出てきて・・・法社会学・法哲学・権力論なども時々研究するので・・・この考えはわかりますよね。こうも考えられませんか?そうです!日本人なら判るはずです!だから・・・××すべきなのです!と乗せられた大衆の中でNo!が叫べるか?

日曜生まれの山本さんみたいな論調だな・・・私は、ある意味子供なんで、No!って小さな声で言っちゃうかな?小さな声なら、隣の人からの肘鉄ぐらいで済むでしょう・・・・

しかし、近頃気になるんです。ちょっと、訳ありでカラオケ屋のオーナーなどもやっている関係で、近頃の流行の曲なども練習するんです。この10年ぐらい新曲など聴いていなくて・・・歌えないのも癪なので、練習するのですが・・・八紘一宇的な内容の歌が多いような?そりゃ、「往け八紘を宇となし、四海の人を導きて、正しき平和打ち立てむ、理想は花と咲き薫る」なんって過激なことは謡われてはいませんが・・・争いごとなどはしないで、仲良く、同じ空を仰いで生きる・・・そんな感じの歌詞が多くなっているような?

もうひとつ、気になるのは、書店の文庫本のコーナーですね。経済を反映してなのか?翻訳小説が激減・・・鎖国的様相とまでは言いませんが、翻訳文学で育った世代としては・・・価値観の均質化、つまり、鎖国的な様相を示しているのでは?なんって思えるわけです。

まあ、核家族化の行き着く先は何なのか?なんてのも、気になるわけです。古代の戸籍などを眺めると・・・妻問婚という形態というか、夜這いというか・・・とにかく、その時代に見本とした中国の家族制度とはずいぶんと違った、おおらかな?家族制度を制度の枠にはめようとした官人の努力眺めると・・・今も、そのあたりは大差ないのでは?なんって思えるわけです。

そろそろ、ハウスシェアなんってものが、普通に行われるようになるのではないかと・・・

ああ、何の研究をしているやら?まあ、明らかに、古代の日本ではハウスシェアなんってのが当たり前のような感じですからね。血のつながった家系より、気の会う仲間・・・それの集合体のような感じが家のような感じです。家・・・ああ、集う場所か・・・なんって。ヤクザ組織なんかも研究してみると面白いかも?あれも、一種の生活共同体ですから・・・あれが、案外次の家制度のモデルなのでは?なんって・・・ちょっと、気が合って・・・酒を酌み交わし、俺の家に来い!そんなのがね。

しかし、社会の様相を眺めていると・・・そろそろ、煽動政治家の現れる基盤が出来上がっているような?そんな気がしてなりません。杞憂であることを祈ります。
(2012.01.17)

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