鹿島神宮の祭祀空間

このところ、サーフィンの写真三昧で、他の事で継続してやっているのは、飲むことと昼寝ばかりです。しかし、少しは鹿島神宮に関する文献研究も続けてはいます。このところ気になっているのは、鹿島神宮の本殿と仮殿の関係なんです。鹿島神宮の祭頭祭ぐらいしか祭礼は真面目に見ていませんが、社務所前から出発した神職一同は、仮殿前での儀式を行い、高房社を経て本殿へ向かっていました。

現在の仮殿はかつて、楼門を入った正面に存在したということですから・・・ちょっと図を作ってみましょう。右の奴が仮殿のうろうろを示しています。明治14年までは社務所を出た神職一行は楼門前の@の仮殿に進み、儀式を行い高房社で儀式、そして本殿へと向かったわけです。なかなか合理的な配置・・・それが、明治14年2月21日からAへと移転・・・祭頭祭とかはかつて、神宮寺の方でやっていましたが、文久3年に神宮寺が焼失、神宮寺跡に建てられた祭事堂で祭頭祭は続きますが、明治4年12月20日に祭事堂・普済寺・護国院が焼失します。そして、明治7年あたりから、鹿島神宮関係の祭事の整理が行われたようです。明治11年には神宮内の厨からの道の付け替えが行われたりもしていて、祭祀空間を広げるための準備が行われていきます。元和4年の位置から、明治14年の位置・・・

明治14年の位置って、現在の奥参道の入口?もしかして、東神門ってのがありましたが、奥参道をふさぐような位置ですかね?基本的に、奥宮って別の祭祀空間ということになるのでしょうか?

しかし・・・この鹿島神宮の建物って・・・なぜ、高房社と三笠社は動いていないのか?ちょっと気になります。この2つの神社は何?という気が・・・高房社のご祭神は建葉槌神(たけはづちのかみ)とのこと・・・天香香背男を討つのに遣わした神様で日本で初めて織物を織り出された神様ですね。

この神と関連のある神社常陸国二宮と称された神社の静神社、ここの境内社である高房社に祀られていました。現在は、主祭神として祀られているそうな・・・かつては静神社の祭神は手力雄命を主祭神とし、左殿に高皇産靈命、右殿に思兼命らしいが・・・まあよくわからん・・・

とにかく、結構この高房社というのは、祭事空間としての意味が大きいのかもしれません。明治以前の祭礼は、この本殿仮殿空間ではなく楼門の外側、鹿島城へ至る道で行われていたような感じです。

さて、本殿の造替って、どんな具合だったのやら?一応、正税を以て20年に1度造り替えるとなっています。面白いのは、現在の本殿を作るとき、徳川家康の寄進した本殿は、今の奥宮へと配置換え、その奥宮は、沼尾神社へと移されます。

つまり、造替は、破壊を伴わないようです。本殿は新しくなり、旧本殿はどこかの神社へ払下げ・・・ということのようです。そりゃえらい神様は真新しい社殿で政務を執られるのが良いのでしょう。

しかし、仮殿というのは不思議なものです。本殿の造替や修理の際に一時的に神様を移す場所でしょうからね。一時的な社殿が、恒久的なものとして維持され儀式空間の中心となっていますから・・・そりゃ、本殿内部の祭祀は最重要のものとされるのでしょうが・・・

そういえば、本殿の祭祀空間を取り仕切るのは?明治になって廃止された物忌でしたっけ?東宮司家の方の・・・本殿祭祀空間と、表向きは、鹿島大宮司家?仮殿祭祀空間を主宰するのか?などなど、気になることが出てきます。

こうなると、物忌に関する文献を当たらねば・・・しかし、出版された文献はあるのやら?何しろ、昔の人の書いた字は読みにくく・・・何しろ、自分の手書き原稿も苦手ですからね。

さて、現在の本殿はたぶん、その昔の姿よりはるかに大規模なものとなったのではないかと思われます。現在の位置が本殿のおよその位置であるとするなら、元和の造替で5間下げたとあるからです。あの壮麗な本殿+石の間+弊殿+拝殿のセットはさすがに5間前に出したら入りきりません。

鹿島神宮の祭祀空間は、もともと社殿内での儀式ではなく、露天での座礼が基本だったのが、明治以降立礼式に変わっていきます。たぶん、元和の造替で弊殿+拝殿が加わったために、5間後ろに下げることになったのでは?なんって・・・

しかし、さらに気になるのは、現在の社務所の位置ですが、裏には谷津が入り込んでいます。今ほど平坦な場所は無かったように思えるのです・・・あの位置に社務所が置かれたのはいつの時代なのか?

稲荷のある帳場と呼ばれる空間も気になります。そして、古代から中世にかけて、大宮司は下津の海岸に住んでいた・・・海岸での塩水による禊ぎをして、神宮へ通勤・・・神宮の本殿などの一部を除き焼失・・・この後、大宮司家及び関連する神職が浜からあがって来て、現在の神宮の隣にやってきます。これ以前の、神職の通勤経路も気になるし・・・

まあ、考えることは面白いものです。
(2009.05.15)

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