現在をうろうろ(421) 平安南道北道の工業とそのインフラ(27) 楽元機械連合企業所(5)・・・ 楽元機械連合企業所への送電系もチェックしてみました・・・何と、水豊水力発電所と直結です。他に、2つの発電所と接続しています。送電系統は・・・ 右のようなものです。という事で・・・水豊水力発電所に関する知識を仕入れないといけないというわけです。・・・とにかく楽元機械連合企業所は水豊水力の豊富な電力が利用できるという事です。 先ずは、水豊水力発電所は・・・座標・・・ 40°27'37.64" N 124°57'44.71" E ここですね。 左のような巨大ダムで発電しています。ここの変電所がスタート地点になります。 近代デジタルライブラリー - 日本窒素事業概要 70コマ によれば・・・水豊発電所は、昭和12年の秋に着工され、15年中には一部発電を開始し、16年末にはフル操業の予定でしたが・・・支那事変及び欧州動乱の影響を受けて計画は遅延します。一応、水車7台で7基の10万キロワットの発電機を回す予定のようですが・・・水車は電業社製、発電機は東京芝浦電気にその他に発注・・・送電線は22万ボルトで満州と朝鮮に半分ずつ送電され、満州へは鞍山・安東経由で大連へ、朝鮮は朝鮮送電株式会社の送電線で、新義州・平壌・鎮南浦方面におくられるであらう・・・どうやら、新義州方面だけのようですね。 欧州大戦の影響で遅れているというのは・・・発電機の一部が富士電機経由でシーメンスへ発注しているという事なんです。国立公文書館 アジア歴史資料センター 標題:43.富士電気製造株式会社 これによると、昭和16年11月の段階ではシーメンスに発注したものは、未だにドイツ本国にあるという事です。日本はこの時点で宣戦布告をしていないから船はドイツに出せるが、シーメンスは途中で没収される可能性を憂慮していますね・・・しかし、11月4日の電報の話が出て10日の電報に・・・当地情報によれば近い将来帰国は難しと思う・・・11月5日の御前会議の決定を踏まえてですかね・・・すると、出荷には数カ月の準備期間が必要とかやってますから、シーメンスの発電機とその付属品およそ18個の重量物の発送は実施されなかった可能性が高いような?このあたりは不明ですね・・・ 一応昭和16年の段階で、3基の発電機を東芝が製造して、2基は完成、1基は10月完成予定、このほか4基はシーメンス・シュッケルト社が4基という事のようです・・・16年の夏に入荷予定ですが・・・11月の段階でドイツでの発送準備が纏まっていないですから・・・果たして据え付けられたのか?7基が据え付けられて、そのうち5基が略奪されたことになっていますが・・・なんとなく、2基しか据え付けられていなかったとか?国立公文書館 アジア歴史資料センター 第3 西部北鮮/3 鴨緑江水電、水豊発電所 まさか、シーメンスから発送されずにドイツの工場にあったものを、戦時賠償でドイツからソ連が持ち去ったとか?東芝の制作中の1基も結局出荷されなかったとか? 設置される予定の発電機は60サイクルと50サイクルの専用発電機は2基ずつ、60・50サイクルの両用機が3基の合計7基の発電機が設置される予定・・・略奪に関する書類は・・・国立公文書館 アジア歴史資料センター 第7章 1945年終戦後ソ連の撤去せる発電設備 この史料ではソ連が略奪したのは3基ですから・・・60・50サイクルの両用発電機の可能性が高そうですね・・・しかし、Wikiの記述では5基が略奪されているらしい・・・史料の示している内容が不安定ですね。歴史の真実は不明ですね・・・2基しか残っていなかったのなら・・・東芝製が2基しか納入されなかったのか? あとは、昭和16年頃の発電所機器の製造能力の問題ですね。水力発電所の水車は電業社の独占で・・・鴨緑江発電所用水車の製造に伴う工場の増築のための鉄材の特配の申請を昭和13年にやっています。電業社の蒲田工場では手狭で、翌昭和14年に10万坪の用地を買収して昭和17年1月まで工場を3期に分けて建設されていきます。国立公文書館 アジア歴史資料センター 鴨緑江発電所用水車を製造すべき電業社工場の増築用鉄材取得に関する件 昭和13年で230トン余りの建設用の鉄材の入手が民間では困難になっているという事ですね。戦時下の統制経済に関する知識も必要だなぁ・・・ そして、その下流のダムからも電力は入っているようです。座標は・・・ 40°21'06.42" N 124°44'10.67" E ここです。右のようなダムがあります。ここでは、発電機は中国側にあるようです。このダムの名称は・・・太平湾ダムのようです。発電は4基の水車を装備しているようです。そして、水豊水力発電所と同じで、中国と北朝鮮で半分ずつ電力を分け合っていうるとの事です。 さて、送電系にはもう一つ発電所らしきものがあります。その座標は・・・ 40°14'50.45" N 124°38'48.10" E 発電所のようにも見えなくない場所ですね。電力を受けているのか出しているのか・・・ 右の写真のような場所です。この工場群で右の方は明らかに・・・主体鉄の製造を行っているように見えます。石灰石を原料としないで、黒っぽいものを扱っているだけですからね。左の青い屋根の建物の右隣の建屋に、石炭が送られています。この場所の南東には鉱山が広がっています。特に生産しているという様子が無くて、大きな煙突があるだけなので・・・ちょっと分かりません。 そして・・・新義州への送電と楽元機械連合企業所との配電を行っている変電所があります。座標は・・・ 40°06'20.36" N 124°31'04.26" E ここです。平壌方面への送電は不明です。どうも、地域規模のというか・・・需要に対して発電所を置くという感じですかね・・・農村地区は送電系が無いか・・・村単位の夜間電灯線があるとか、そんな感じですかね・・・電気鉄道のある場所は、鉄道電力の恩恵を受けられる・・・昔の統制前の日本のパターンですね。 我が国は、重要産業への電力を集中するために発電所を送電網でつないで、不急な地域の送電をカットする事で軍需工場への電力を優先的に配給するシステムを構築して行った感じです。電力行政はどこまでシステムを後退させる気なんですかね・・・ちょっと気になります・・・冷蔵庫などもそのうち蓄電池を積んだものが出るとか・・・電力供給が不安定になった時のために・・・電気料金が安い時間に貯めて使うとか・・・安価な無制限の電力供給ってのが本来のエネルギー行政の在り方だと思いますが・・・そういった事はまるで考慮していないような・・・ 2014.09.10 |
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