現在をうろうろ(73)

 日本語が変化する・・・

 近頃は、何が何でも戦争をしようと画策している人がいるようです。戦争を行うための枠組みの新しい名称が決まったようです。それは御存じ「積極的平和主義」と呼ばれるものです。私が知っていた積極的平和主義というものは、単に平和であるだけでなく、平和の敵である貧困や差別をなくす努力を言うのだと思っていました。

 近頃は、積極的に軍備を拡張して、平和の敵を武力で屈服させるのが積極的平和主義というようになったみたいです。どうやら・・・何か見当違いの事を行っているような感じがします。まあ、我が国には、素敵な戦隊シリーズというジャンルのテレビドラマシリーズがあります。それに毒されているようです。

 このテレビシリーズには、法はありません。曖昧な正義の概念が提示され、その正義に基づいて、敵と目されるものが無差別に攻撃を受け、壊滅させられます。戦いには和平は初めから存在せず、敵は必ず悪の権化で交渉の余地すらなく、武力によって勝負が決まるという恐ろしいものです。

 どうやら、国家間の紛争も、このように絶対的な悪の権化というものを設定して、何が何でもこの絶対的な悪に対抗しようという素敵な思想によって、積極的平和主義が構築されているように思われます。敵は悪の権化で対話の余地が無い・・・平和を愛する・・・自分が信じる正義を奉じてくれそうな仲間を糾合し、それ以外の考えを持つものを絶対的な悪の権化として破壊しなければならないという、素晴らしい正義感に立脚する主義のようです。

 従って、この積極的平和主義に於いては、法や互いの立場などは考慮される事はありません。武力を用いない平和を唱えるだけで、対話などはもちろん、これらは積極的平和主義の敵になってしまいます。積極的平和主義を唱える人は、自らと違うものに対して、同じにならなければならないことを積極的に要求します。ここでは、多様な価値観は否定され、積極的に一つの価値観へと暴力をちらつかせて糾合しようとします。そこでは立場の違いや人種の違いなども問題になります。

 また貧困とも戦い、貧困であることが罪であり破壊されなければばらない敵なのです。貧困であるがゆえに積極的平和主義を理解できない敵となってしまうのです。積極的平和主義は悪と戦うための武力が不可欠です。そのために、多額な借金を積み上げてでも、悪と戦わなければなりません。多額の国債を発行することで、体制を維持する事もまた正義なのです。そして、積極的平和主義の実現のための国債の発行をとどめようとする勢力もまた、積極的平和主義の敵なのです。

 自分と違うものを、同じ考えを持たないものを、同じ民族でない者を、同じ宗教を持たない者を・・・すべての違ったものを破壊することで平和を実現しようとするものが、積極的平和主義なのです。

 積極的平和主義は、その主義に反するものを区別するために、不信感を高め、平和な状態を不安定なものとし、猜疑心や差別を増長して、どうしても戦争をしなければならないような状態まで追い込み、その状態から、一挙に多くの国を巻き込んで平和を構築しようというもののなのです。

 しかし、現状の我が国は、一国だけではどうしても他国との戦争を戦い抜く事は困難です。そもそも戦争をしないという国際的な取り決めの中に我が国はいたはずなんですが、なぜか、それは徒党を組んで戦う事が正義であることになり、近頃では、戦争を準備する事が平和を維持する活動であるかのように述べられています。

 今では我が国の積極的平和主義に主導される事が、正義であり、我が国の将来成し遂げられるであろう強大な軍備こそが、この世界を大きな積極的平和主義の暈で覆う事になると考えているのです。

 将来建設されるであろう我が国の強大な軍事力によって燃え上がる民族の意思が、この世界に積極的平和主義をもたらし、均質な疑いの無い平和を築き上げると信じているようです。そして、その旗手の名は・・・

 正義の味方・・・あXXXXXなのです。 ああ馬鹿らしい・・・どうやら、退屈もまた平和の敵のようです。言葉の上では、八紘一宇も美しい言葉です。この美名の影でどれだけの人が泣いたのやら?正義を振りかざすと面倒なことになります。

2014.05.04

  

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