香取神宮をうろうろ(55)
 香取新誌 (15)

 さて、古銭いじりも額面の低いのでは面白くありません。持った感じってのが大切ですから。そこで取りいだしますのは・・・偽物ですが、我が国の貿易銀1円です。本物なら明治10年ですから清宮君も生きていた時代なんですが・・・刻印などは悪くないし、材質も一応は銀のようです。しかし、重さが足りませんので・・・それが問題。よって正真正銘偽物です。まあ、本物だと、こいつは高価な銀貨なので愛玩品にはしにくいのでね・・・この貿易銀ってのは面白いもので、いろいろな国で発行されますが、微妙に重さが違いますね。結局最も広く流通したのはメキシコドル・・・正式にはメキシコ8リアル硬貨なんでしょうが、アメリカでも1ドルで通用したので、一般名がメキシコドルなんですね。中南米のスペイン領で発行された銀貨が世界を巡り・・・というより、メキシコの銀山から大量の銀がヨーロッパに流れ込み、銀の価格が大きく変動したために、ヨーロッパの国々は銀本位制から金本位制へ移行・・・余剰の銀貨がアジアへ流入、中国商人を中心に貿易用の銀貨のスタンダードになったという事のようです。まあ、大型銀貨は重くて、いじるには良い重さです。

 さて、続けるとしましょう。近代デジタルライブラリー - 香取新誌 35コマ このあたりを読んでるのでした・・・側高社 白状祭・・・からです。


この社の祭りに、白状祭というのがある。これは江家次第に見られる。春日の事と同じ様である。馬を陸奥より牽いて来るというわけであるので、この神当時馬政を講じていたことがあったのを訛って伝えているのに違いない。此の大倉は所謂大倉のあった所であって、緊要である土地であると思われる。それだから、御子も置いたのに違いない。


 春日の事と同じ?春日祭かね?江家次第・・・名前は知っているが読んだことがないですから・・・近代デジタルライブラリー - 江家次第. 第4・5巻 98コマ以降に春日祭が書かれています・・白状祭って側高社でやるのかね?津の東西社?折口信夫 春日若宮御祭の研究 ああ、分かった・・・白馬の節会に、犯人を作つて梅の白枝で打擲すると言ふ例があるが、北陣で検非違使が雑犯を裁断する式も、白馬節会のつきものです。この手のやつですね・・・近代デジタルライブラリー - 江家次第. 第4・5巻 102コマ この神社で有名な祭りは・・ひげなで祭りですが・・・春日祭のは近代デジタルライブラリー - 玉葉. 二 109コマ この話ですね。・・・何だっけ?白状祭・・・堀祭と白状祭・・・香取神宮から側高神社へ行く祭り・・・霜月7日の行事・・・馬を陸奥から牽いて来る・・・これは、陸奥から良い馬を盗んできて、隠す話ですね。満ち干の珠とか・・・やはり、津の東西社の祭礼では?まあ・・・一連の祭りですが・・・しかし・・・この祭り、側高の神が陸奥から馬を盗んでくる話だよね・・・

 手持ちの資料だと、源太祝年中行事に右のように津の東社での人員の並び方がありますね。文言としては・・・

 霜月7日、堀川命婦年祭、惣神官馬上にて出勤、馬者正7ッ時御神前に出るべし、同夜堀祭、壱・貳・三は白状祭り、橋祭、天降祭、団子祭、璽社祭、蔵鎮祭、馬場殿祭、装束狩衣にて出勤
 惣神官馬上にて出勤、馬壱疋につき藁壱杷宛、側高祝より馬のわら出ると云えり。

 ・・・とのことですね。どうも、橋・團子・蔵・馬場・・・器物に関する祭りの様な?馬上での心得として、笏は使わない事、代わりに扇子を使う、扇子は要の所に紐を通して腕に付ければ取り落とす事がないとか・・・細かな注意書きがありますね。でも、逆に言えば、笏を失くした人がいて、扇子に替えても扇子を失くす・・・扇子には紐をつけよ!となるのでしょう。こういった品も神宮の財産なのかね。失くすと始末書を書いて、弁済かね?とか・・・側高からは馬の食い扶持が出るのか・・・

 霜月七日か、立冬ですね。真夜中には月が沈むので、夕方の行事が行われることが多い日ですが・・・違った・・・月は良いとしても、これは陽暦だ、陰暦の霜月七日はだと10月の半ば過ぎだから立冬ではない、旧暦の霜月七日あたりは12月初旬で・・・納めの薬師とか、事納めってカレンダーに書いてあるので、年末感謝祭なのかね?これも陰暦を陽暦に日付だけ直したやつなのかね?命婦年祭・・・命婦というと・・・弧座山神社関連かね?例祭1月12日とあるが・・・

 白状祭の実体が良くつかめないですね。・・・探せば・・・あるものです。千葉県史料 中世編 香取文書に・・・旧源太祝家文書に・・・これって、結構面白いですが・・・一部読みとれない・・・知識の限界・・・まあ、いいか、

白状祭詞
私伝白状祭り詞
抑側高大明神凡夫之時、陸奥の五万の長者の馬屋より、父馬千疋母馬千疋の馬種を盗出し、すすめず峠を追越、岩ヶ崎のりこえすを乗越牧野の牧に追込、笠塚まで笠を掛、芝の木までしばり置き、隠井まで隠し置

大宮司父馬百疋母馬百疋
大禰宜父馬百疋母馬百疋

宮之介父馬五十疋母馬五十疋
権禰宜父馬五十疋母馬五十疋

物申祝父馬五十疋母馬五十疋
国行事父馬五十疋母馬五十疋

大祝父馬五十疋母馬五十疋
副祝父馬五十疋母馬五十疋

惣社中へは四十疋、五十疋、或三十疋宛配分いたし、我徳分までめこ馬壱疋、如件



 数か所自信がない・・・にょろという感じの崩し字は分からないので適当・・・まあ、大意は取れる・・・研究者じゃなくて良かった・・・字も読めんのか!ってやられますからね。研究ごっこ万歳!というより書いた人の癖がこれだけでは分からないので、私の限界・・・

 側高の神が、凡夫の時のお話ですね。側高の神は、陸奥の国から立派な馬をたくさん盗み出してきて香取まで逃げてきて、旨い具合に隠して、みんなで分けてしまった。しかし、側高の神の取り分は良くない馬が1匹という事ですかね?近代デジタルライブラリー - 香取郡誌 208コマ ここに説明がありますね。側高の神は・・・名前を秘す神であるのは、まさか、この事からなのですかね?アメノヒワシノ天日鷲命じゃないな・・・メルクリウスかね?日本でこの神に相当する神は何だろう?市原市にある建市神社・・・ここは盗賊を護す神社だということで・・・祭神は?建甕鎚命らしい・・・

 しかし、なんで・・・共同正犯じゃん?実行犯はもと凡夫の側高の神、香取のお偉いさん達の思惑が、陸奥から馬を盗むという大罪を犯させる・・・ん?もしかしたら・・・これって、側高の神は外来の神で、香取神宮の仲間入りをするための行為とか?大倉で社を出すなら、陸奥へ行って馬を盗んで来い!盗んできたら仲間にしてやる!もと凡夫の側高の神は盗みに行って首尾よく馬を持ち帰ります。そして、山分けのはずが・・・自分の所に来た馬は1匹だけ・・・上納がかなり大きかったものの、香取ファミリーの一員になれて・・・大勢の人に大きな富を与えたので・・・共同正犯を確認するお祭りかね?

 なんだか、秘密を共有することで仲間の結束を固めるという、秘密結社のパターンだね。しかも悪い方の、私の嫌いな東洋的な・儒教的な仲間意識・・・悪い事をも隠し、下手をすると悪を増長させる方向に向かいかねないものですね。私は、西欧的な友愛の精神の方が好きですね。仲間とは悪を董す仲間・・・それが真の友愛・・・日本の戦後教育のゆがみとされる、お友達の様な先生・・・フレンドリーFriendlyな教師・・・友好的な,好意的な; 敵意のない; 人なつっこい・・・Friendって、精神的に高め合う仲間で・・・・ああ、こんなのどうでもよい・・・友達・愛・・・日本的な意味内容と微妙にずれているというだけです。同じ言葉で表される言葉の背景にある文化が違いすぎる・・・ただそれだけ。

 秘密を共有することで仲間をつくるというのが、この白状祭の背景にあるのであれば、側高の神は、この祝詞の書き出しにある通り、由緒ある神の末裔でもなく、漂泊の生活の末に香取の大倉にたどりついた凡夫であるが、非常に知恵を持っているよそ者なのでしょう。

 ・・・そして、海夫を中心とした香取神宮勢力が陸上をも支配を企て、プロジェクト”牧”の検討に入った・・・陸上の機動戦には良馬が必須である、陸奥の国に良馬ありというが、売ってくれない・・・そこで、作戦”忍男”を発動、香取ファミリーに入りたがっている才気あふれるよそ者にその任を任せます。上手くいかなかったら香取神宮は一切関係ない、上手くやれば側近にしてやる。同時に、事件の隠滅作戦”膽男”を発動し盗んできた馬を隠す手はずを整えます。なんとなく、白状祭の舞台になる神社の名前と言いピタッとはまってくる感じです。

 陸奥のどこから盗んできたのか・・・地理障害である峠越えがあるか・・・那須・磐城・郡山などは川で水戸の方につながっているので峠越えはない・・・延喜式の牧だと信濃・甲斐・上野・武蔵あたりで東北にはない・・・まあ、勅旨牧を襲うわけはないか・・・香取あたりから東北を目指すと、意外と平地か川沿いの起伏の無い道で行けますから・・・峠越えがある近場の陸奥の国・・・会津盆地ぐらいですかね?芦ノ牧あたりが良さそうな・・・とにかく、馬を盗んで進めない峠を越え、越えられない洲を乗り越えて・・・ここで満珠・干珠が役立って追手を撒きます。そして、隠滅作戦”膽男”も上手く行き、香取神宮とその界隈は沢山の良馬を得ることができた。よそ者の凡夫は神として崇められ、香取神宮第一の摂社として祀られるようになったが、得たものは牝の小馬ただ1頭・・・ん?計算が合わない。だって10の倍数匹を分配していますから・・・これって分配に預かれなかったということ?

 いや、案外、嫁さんの斡旋があったのでは?この時代の笑いというものがどんなものなのかによりけりですが・・・よそ者ですからやはり・・・そういえば、何かで読んだぞ・・・近郷の雷神社 西念地蔵 に・・・村の娘は村の若衆のもので、他村の若者が村の娘を所望する時は、若衆達に渡りをつけなければならぬ習慣でありました。だと・・・なら、もう1節加えれば・・・馬にしては顔が短く不細工だ、お前には勿体ない、俺がもらうか。どっとはらい・・・下総の民話の〆言葉は何かね?しまった・・・祝詞だったからこういった落ちはないのか?

 めこ・・・馬戸か?それなら、厩と馬1頭かね?でも・・・馬頭なら非常に良い職なはずだが・・・?

 真面目に春日祭の話からつなげて書いて行けば、これでも修士論文ぐらいかけそうなネタかもしれません。ただ、私が秘密結社とか好きなだけなんですが・・・戦前の抗日秘密結社なんか好きですね。外務省に色々と資料があって・・・これでも遊べますが・・・とにかく、白状祭というのはこんな感じの意味を持つのではないかと思うわけです。あとは、元禄の造営の際に御神宝として珠を入れる箱がありましたが、あの箱に納まるものが気になりますね。神宝一覧には珠を見かけませんから。

 清宮君の考えの御子とはちっと違いますが、この地が重要な地で、立派な馬泥棒が神として祀られているという事なんですかね?そうであれば・・・神の名は秘密にされてもおかしくないですが・・・実はタケミカヅチ君だったとか・・・分け前が少なくて独立したとか?・・・妄想はこの程度が良いでしょう。悪事の白状で、連座するような行為・・・これは、絶対秘密結社系の行事だと・・・だから夜にこそこそと盛大にやるのでしょう。

 いや、なかなか面白い内容です。この詞を採集した旧源太祝、この行事に何か特別な思いでもあったんですかね?ちょっと気になります。この行事の観客はどんな風に眺めていたのか?それも気になりますね。さて、続きは・・・次回にしますか・・・
2013.09.19

関係ないが、興味深いもの
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参考になるもの。
東京大学史料編纂所 Historiographical Institute The University of Tokyo
電子資料館 | 国文学研究資料館 
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