東北をうろうろ(12)
 えさし藤原の郷にて・・・・

 えさし藤原の郷の展示物はなかなか興味深いものです。経清の館として造られた建物ですが、気になるのは蔀戸です。

 この時代、蔀戸をどのように製造していたのか?それが気になるんです。何しろのこぎりなんってものはこの時代にはないでしょうから、格子を作る角材も蔀の間に挟んだ薄い板などは、全て材を割ることで作られ、それをさらに槍鉋などで削りだしているのでしょう。

 そうすると、こんな簡素なものであっても、その製造には非常な手間がかかることになります。板張りの床だってかなり高価な代物になりそうな・・・道具の発達が高度な製品の製造に大きく貢献することが分かります。

 この建物では、規格部材から構成されていますが、このモデルとなった時代の建物は、規格部材とは違ったもので構成されるのでしょうから、ずいぶんと印象の異なる建物であったのかもしれません。

 しかし、この蔀を使うことで、開口部の大きな、建物を作ることができるようになり、明るい空間を作り出す事が出来るようになったわけですね。

 古代の丹塗りのものと比べるとかなり質素な感じ・・・藤原の郷にはほかにもしょぼい建物がありました。それは・・・藤原郷です。秀吉の生家として造られた戦国時代の貧農の家ですね。

 貧農って言っても、結構屋根が高くて立派な感じがするのですが・・・貧困層の住居って、基本的には柱は細く短い出入り口は低く、窓などの開口部が少ない夜気と寒さを防ぐのが基本でしょうから・・・ちょっと立派かな?

 近代に入ってからの日本の開拓がはじまったときに最初に建てられる住居のようなものが、基本的に貧農の居住場所では?なんって思いますからね。

 そりゃ、竪穴式住居よりは高級とは思いますが、江戸の標準的な長屋である九尺二間というやつとは比べ物にならない建物では?この九尺二間だって当時としてはきれいな建物は、中流階層の住宅でしょうから・・・汚いのや半壊状態のが下層階層に供される・・・日本乃下層社会って横山源之助の本でも読み返すか・・・貧民窟と呼ばれる場所の記述を読めばよいわけですから・・・

 それより農村の貧困層の住宅に関する記述のある本は?貧困に関する明治時代の本を眺めると色々と知識が増えます。明治時代の税率は、何を算定の根拠にしているか?よくわからないですが・・・57円ほどの収入に対して17円ほどの税金がかかるから・・・それに対抗する運動が広がっているとか・・・これだと税として収入の30%近くが徴収されていることになりますね。続けて、軍事費の問題が出てきて、軍事費が税を高いものにしていると・・・

 ふむ・・・ふと、貧乏は不足を表すもので、不足=不満か?といえばそうでもなさそうな気がします。不足が何に帰属するか?その問題のような?神様のような絶対者が原因の不足は不満ではなく、試練として解釈すれば、それでおしまい・・・悔い改めよと内省によって克服できるもの、念仏という簡単な行によって克服できる・・・しかし、その神という絶対者の代わりに、資本家に置き換え、不足の原因を、搾取という素敵な言葉に置き換えると、不足は不満になり、不満の方向性が決まることになります。ああ、こいつが煽動の基本かな?

 あれ、さらに変な方向へ・・・

 内部を眺めると・・・すごいことに鉄鍋があります。この時代の鉄鍋はきわめて高価な製品では?なんってつまらないことを考えてしまいます。家の中で薪を燃すのですから結構けむい家であったのでは?

 柱は仕口によって結合されていますから、これまた高級・・・この時代の貧農の家ってこんなに立派なのか?ちょっと気になります。製材した柱の掘立柱か・・・

 木の皮をはがしただけの掘立柱で、このような構造の上屋があり、庇のような下屋が取り巻く形で、長持ちさせるべき上屋の柱のもとに雨水がかからないようにしていると思うのですが・・・

 まあ、この建物なら私も住んでも住めないことはないような?まあ、工夫次第で現代的な生活を営めるだけの建物と言えるかもしれません。

 まあ、映画やテレビドラマなどは虚構とも言えますから、ある程度近代的な雰囲気でも良いのかもしれません。開口部が多い現代の住宅とはずいぶんと違っていますけどね。そういえば、近頃の家って、再び開口部が減少しているのか?トイレなんか窓のないものが多くなってきているような?

 ドラマの撮影のためのテーマパークって、写真を撮るには便利にできている感じですね。しかし、あまり面白いとは思えない・・・でも・・・

 まあ、再び行くか?となると、よほど新奇なものが出来ない限りはパスかな?なんって・・・何が足りないのか?血相を変え、血の滴る抜き身の刀を振りながら走る人とか・・・旅姿の美女・・・辻芸人・・・物売り・・・そういった人が歩いているなら景色になるのでは?

 まあ、時代が問題ですが・・・笊や籠を編むとか・・・それなりの生業の在り様とか何かがないと、あまり面白くない・・・園内を管理する人間が、旧時代の農民の姿を制服とするとか・・・

 人を歩かせるってコストがかかるから、伝統工芸作家に建物を貸して、そこで工芸品の生産を行わせるとか?こけし職人や鋳造業者とか・・・古風な本物の生産現場を提供するとか・・・味噌や醤油の仕込とか、漬物とか・・・古来の製法というキーワードを持つもの、現役だが江戸の雰囲気を感じさせるもの・・・

 園内で興味深く眺めたのは・・・金色堂ですね。ふむ、覆い堂の中の金色堂が外に建てられているとこんな感じなのか・・・大きさなどは微妙に違うようですが・・・まあ、雰囲気はありますね。ただ、金箔ではなく金色の塗料による金の表現には限界が感じられますね。黄土色がちょっと光っているという感じですね。

 本物は・・・木製の瓦が乗ってますね。木瓦はこけら葺より安価であるようですが・・・金色堂はなぜ、こけら葺きではなく安価な木瓦なのか?ちょいと気になります。漆がかかってるのかな?よく覚えていないのであります。

 野外に燦然と輝く姿も悪くない・・・今の覆堂は鉄筋コンクリート製ですから・・・こういった復元模型も悪くないのかと思うわけです。

 この園内で時間がなくても必ず見なさい!って言われたのが伽羅御御所です。寝殿造りの建物、庭園があり、無量光院という宇治の平等院のコピーのような建物が置かれています。

 この伽羅御所というのは、平泉伽羅楽にあった奥州藤原氏第3代目の藤原秀衡、第4代目の藤原泰衡の居館だそうでです。遺跡はどうやら未発掘で、全貌は不明・・・しかし、それらしき建物が復元されています。まあ、お金持ちで当時の流行の最先端を追っていたような方々の居宅ですから、それなりに推測が成り立つのかな?

 寝殿造り・・・中を見ての感想・・・こりゃ寒そうな建物だってことですね。しっかりとした土台の上に立っていますからそれほどでもないかもしれませんが、床下は風が通り抜け、隙間風も入るでしょう。天井が高いので、暖房は困難、火桶程度のものでは寒いのでは?

 といっても、この寝殿造の建物は儀式空間でしょうから居住性はある程度目をつぶっていたのでしょう。舞を見せたり、この庭に人を並ばせて訓示を垂れたり・・・

 居住空間は、開口部のない塗りこめの部屋か何かがあるのでしょう。

 確かに、良い眺めであります。しかし奥州藤原氏って、ちょっと不思議です。行政機関としての館も別にあり、こんな居館があって、さらにこの館から見える場所にも大きな館を持っていたり?

 成金趣味なのか?それとも、さまざまな顔を持つので、それなりの館があちこちにあったのか?

 それとも、財産が山ほどあるので、京に負けないような都市が欲しかったのか?

 平泉の豊かさの源は何なの?そして、平泉の当時の都市計画はどうなっていたのやら?このような巨大な建物があれば、それを支える工房があるだろうし、住民だってそこそこいるはずですからね。

 役職からすると、軍団も率いていたようですが・・・その割には、滅亡はあっけなく・・・

 金の産出と、それに伴う商業の中心・・・人口は5万から15万人ぐらいらしい・・・伝承で良く出てくるのは金売吉次ですかね・・・この人物、あちこちで難にあったりしていますから・・・東北地方の中心地、奥州の金を求めてどれだけの人が動いたのか?あとは、この時代の金の価値ですね。それと、工芸品の手間賃との兼ね合い・・・労働の対価は何?

 色々と、気になりますがそのうち調べてみましょう。とにかく、庶民の生活の様子って、ふつうの歴史の中には出てきませんから。それでも、庶民は生きている・・・

 しかし立派な屋敷です。そして、庭にあるように見える、赤い建物は、同じ所有者の屋敷です。ちょっと離れたところにあるという雰囲気を出すため、4分の1の大きさなんですと。

 近景は悪くないのですが、裏の山の木々の葉が大きく見えるので、やや興ざめ・・・もう少し葉の小さな木々にしないと・・・距離感が失われてしまうような?

 平泉を世界遺産に・・・あまりうまくいかないようですが・・・金色堂の周辺だけが、ある程度残っているというわけですから、やや弱いかな?それに、連綿と続いているものがあまりない・・・石見銀山のようには行かなかったということなのでしょう。

 つまり、話題性より現物があるかどうかでしょう。すごい遺跡ならOK、しかし全貌のわかっていないものはだめということなのでしょうか?まあ、藤原の郷も一通り見ましたからOKでしょう。人間の住処というのは、あるレベルを超えるとみな同じようなものですね。しかし、トイレがね。樋箱はあまり使いたくない気がしますね。まあ、これもまた文化です。次は・・・どこへ行ったっけ?

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