アンティークな?蓄音機とSP盤(1)

 やっちまいました。買うまいと思っていたものを買ってしまいました・・・蓄音機、現在のテクノロジーからすると遥かな過去の遺物・・・しかも、よくわからないメーカー品、SP盤が50枚ぐらいついているというのでオークションで・・・ポチ、落札してしまいました。

 蓄音機の構造は単純です。スプリングモーター、調速器とかの集合体とサウンドボックス、蓄音機の名称は、一応三菱のマークが入っていてPEARLTONEってあるわけです。右の写真ですね。PEARLTONEってあってその下はRYOWAって菱和・・・三菱電機グループの菱和かね?

 菱和の沿革を見ると・・・
1927年(昭和2年〉 日本ワヰコマグネット株式会社設立
 米国製ワヰコマグネトーの日本総代理店として創業
1931年(昭和6年〉 三菱電機と共に国産マグネトー製造に成功
 「三菱マグネトー」の販売を開始
1941年(昭和16年〉 菱和商工株式会社設立
 電装品の販売を本格的に開始
1946年(昭和21年〉 社屋移転し、電装品の販売を本格的に開始
1950年(昭和25年〉 名古屋出張所(現東海支店)開設
1953年(昭和28年〉 三菱電装品サービス店の全国展開に着手
1959年(昭和34年〉 三菱カーラジオの販売を開始

 こんなゼンマイ仕掛けの蓄音機を製造した時代は社名を考えると・・・この製品は昭和16年以降であるという事かね?その下の段にはENGINEERINGWORKS・・・多分、この菱和の製品なんでしょう・・・マグネトーか、ガソリンエンジンの磁気点火装置ですね。懐かしい響き・・・でも、刈り払い機などでは現役ですね。私も1台使っている・・・自動車用電装品メーカーが蓄音機を製造したのか?こりゃ珍品です。

箱は、何と鉄板ですね。違った、磁石が付かないから鉄ではない、アルミ合金か真鍮か?さわった感じの張力からすると真鍮ではないような?塗料の剥げたところから見えるのは灰色の金属ですから、こりゃアルミ合金製?ジュラルミンかよ?ジュラルミン製のケースなんって・・・車載用の蓄音機かね?確かに箱はアルミ合金製で堅牢ですから・・・なんで?アルミ合金?この厚さでこの張力はジュラルミン・・・

 メカニズムが気になります。しかし・・・この蓄音機、見かけはコロンビアの蓄音機のようだったので・・・サウンドボックスはコロンビアNo15がついていました。

 ダイヤフラムは破けていて・・・紙で補修した気配が・・・ホーンの中に丸く切られた紙が入っていましたからね。まあ、現状で廻してみると・・・トルクが弱い・・・これは、出品者も書いていましたね。どうせオーバーホールするわけですから、こんなのは問題ないです。

 この蓄音機を開くためのボタンは右の写真のようなものです。この金属の箱の工作は極めて良くて、薄板が綺麗にプレスされ合口はきちんと合っていて素晴らしいものです。このボタンで箱のふたを開くやつはコロンビアのG-200シリーズの・・・ものですね。そして、ケースの外側の針入れ

左の写真が針入れを開いたところです。上の写真の右の隅に写っている銀白色の部分で、ケースの曲線に合ったものです。

 ちょっと気になるのは・・・ここまで作り込まれたものの情報がネット上に無いの?というやつなんです。このアルミ合金製のケースを作るためにはジグが製造されたはずです。プレス加工ですから金型が、アルミのフレームにリベットで留められたものですから・・・量産品と思われますから・・・針入れだって、コロンビアのものは四角な箱なので、それを流用したものではなく、鋳物で作っているようですから・・・それとも、こういった曲線を持ったコロンビアの製品があったのか?まるで、ZERO HALLIBURTONのケースみたいな感じ・・・

 メカニズムは昭和10年代なんですが・・・アルミ製のケース・・・ZERO HALLIBURTONは昭和13年創業ですから・・・日本に昭和16年以降でZERO HALLIBURTONのようなアルミのケースを作れる工場があったのかね?アルミの弁当箱や鍋の工作精度ではないような?なに、このケース・・・戦後かなりたってから、作ったとは思えない・・・昭和10年代のメカニズム・・・冗談で作るには手の込んだもの・・・なんで?

 でも面白い・・・現代に通じるデザインのジュラルミンのケースに、前時代の遺物を詰め込んだのか?昭和10年代に作ったらちょっとは話題になる先端製品・・・針入れもきちんとケースの曲線にマッチしていますから・・・こりゃ何だ?となるわけです。

 三菱のマークを入れたフェイク商品?にしては手が凝り過ぎています。ジュラルミンのケースって高価ですから・・・しかも、これはジュラルミンの平板をアングルで組み合わせたものではないので・・・プレス加工です。そして、フレームにリベット止めしてありますが、リベットの頭は飛び出していない・・・くぼみを作って埋め込んであるようですから・・・それなりの工業製品・・・鍋職人ではこういったものはちょっと作れないレベルでしょう。

 鉄製のケースだったら気にもしないのに・・・磁石が付かないので・・・アルミケースなんだから・・・時代がミスマッチな気がするわけです。昭和10年代の可能性は・・・三菱系の会社って・・・ジュラルミンの加工技術は・・・三菱重工業名古屋航空機製作所がありますが、こんな箱を製造したかね?ただ・・・この箱のリベット、ある意味、沈頭鋲なんで・・・モノコックの戦闘機の構造と同じなんでね・・・でも、今風にいえば・・・最新鋭のロケット工場でレコードプレーヤーのケースを作っている・・・ミスマッチですね。

 少なくとも、これと同じものを作るとなると私の工作力ではかなり困難、まるっきり同じサイズのアルミのアタッシュケースでもあれば、それを改造すれがなんとかできるかもしれませんが・・・手間がかかりますし、それを行う意義が見出せないですから・・・戦後にこれを作るような酔狂な者もいないような?・・・従って、これはオーパーツ、場違いな加工品であるようです。

 どうです。右の写真・・・あちこち剥げてさびてはいますが、このジュラルミンのケース、なかなかおしゃれだと思いませんか?塗料は何だか不明・・・少なくともアセトンでは落ちませんでしたが・・・

 加工精度は高く、きちんと締まりますし・・・ちょっとびっくりの品物です。さて、メカニズムの方をきちんと整備しなきゃ!

 実は、蓄音機の分解整備はしたことが無いんで・・・これから手探りできっちり分解整備をしようという無謀なことを始めようとしているわけです。

 しかし、基本的な構造の知識はありますから、なんとかなるはずです。さて、工具を引っ張り出して分解整備へと入って行きましょう。

 取っ手の皮には保皮革油でも少しくれてやって置いて綺麗にしてやりましょう。なんとなく、これを綺麗にレストアしたら、私のお気に入りの1つになること間違いない・・・少しずつ、SP盤も集めるとしましょう。

(2013.11.25)













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